日本初の鉄道が横浜—新橋間で正式に開業してから10月で150年になる。トラベルミステリーの第一人者として活躍を続ける神奈川県湯河原町在住の作家、 #西村京太郎 さん(91)に、20代の頃から好きだという鉄道旅の魅力や作品で描くトリックの編み出し方について語ってもらった。【聞き手・池田直】

人事院勤務時代から「乗り鉄」

——鉄道に魅力を感じるようになったのはいつごろですか。

◆幼少期を過ごした西小山(東京都品川区)の家の近くに踏切があり、そばで遊んだ。電車通学もした。魅力を感じたのは旅をするようになった20代の頃。高校卒業後に人事院で働くようになって、土日が休みだったからね。土曜に上野駅に行き、夜行列車に乗って一日遊んで帰って来る。青森駅まで行ったり、日本海で泳いだりしていましたよ。乗り始めた当時の給料では運賃が高い席には座れず、車両の中で安いほうの席に乗ることが多かったね。

——どのくらいの頻度で乗っていましたか。

◆毎週のように乗っていた。乗る時は端っこまで。寝台車は寝ちゃえばいいからさ。朝になって、起きた乗客が洗面所に顔を洗いに並んで「昨日なかなか眠れなかった」なんて話をしているのが面白いんだよ。全国で新しい列車が走ると2、3回は乗っている。

——若い頃から作家志望だったのですか。

◆人事院に入った後、同人雑誌を編集していた。自分は人事院じゃ出世はできないなって分かったこともあって、29歳で退職して作家を志した。オール読物推理小説新人賞や #江戸川乱歩 賞に応募したが、何度も落ちた。大変でしたよ。トラックの運転手としてパンを運んだり、探偵社に勤めたりしながら、小説を書いていた。オール読物の新人賞を受賞して、やっと売れたのは32歳。

売れなくて、ブルートレインを題材に

——その後、ブルートレイン「はやぶさ」を舞台にした作品「寝台特急殺人事件」を発表されました。

◆作家になってから、なかなか本が売れなくて……。出版社に案を出してほしいと言われ、ブルートレインを題材に執筆することになった。当時、小学生の子どもたちはブルートレインが好きだったんだよね。駅に停車すると子どもが写真を撮りに来ていた。

——多くのトラベルミステリーを書いていらっしゃいますが、トリックはどうやって考えるのですか。

◆鉄道で旅をしていると、列車同士がすれ違ったり、同じ駅で隣り合ったりするタイミングなど時刻表だけでは分からないことに気づくんですよ。あとは上りと下りが十字に交差して走っていて片方から凶器のピストルを投げればもう一方の列車に届きそうだなとか。「絶対届かない」って指摘を受けて実際に試してみたら、しっかり届いたこともあったよ。夜行列車がなくなって、新幹線全盛になってトリックを考えるのが難しくなってきたね。最近は窓も開かないから、窓を使った犯行もできないんだよ。

——夜行列車の魅力とは。

◆夕方6時くらいに乗ると、だんだん外が暗くなっていく。あれがいいんだよね。遠くに山があって、その上にぽつんと家があって明かりがついている。だけど次に乗った時にはついていなくて、まだ帰っていないのかなとか考えて……。トンネルを抜けると雪国、なんて言うが、晴れていてもトンネルを抜けると雪が降っていることは本当にある。風景が変わっていくのは日本の鉄道の楽しいところだね。

——開業から150年たち、鉄道を巡る状況も変わっています。期待していることは。

◆新幹線は今は東京で乗り換える必要がある。だけど、それをつないでほしい。そしてその路線で夜行列車を復活してほしい。通勤や観光に特化した鉄道にはない魅力があると思うから。いつか、その列車に乗って北海道から九州まで行きたいな。

にしむら・きょうたろう

1930年、東京生まれ。人事院勤務を経て、作家の道へ。65年に「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞、81年に「終着駅殺人事件」で日本推理作家協会賞受賞。十津川警部シリーズなど著作は600作品を超える。2005年には湯河原町から名誉町民の称号が贈られた。

#魅力 #西村京太郎 #トリック #夜行列車


「夜行列車よ、復活を」西村京太郎さんが語る鉄道の魅力とトリック

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