京都観光の人気スポットとして一般のガイドブックにも紹介されている嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車。
とくに春の桜、秋の紅葉のシーズンは大人気で早くから予約で満席になってしまう。その魅力や車窓の見どころをご紹介しよう。

廃線跡を再利用した嵯峨野観光鉄道

1989年にJR山陰本線は複線電化のため嵯峨駅(現在の嵯峨嵐山駅)と馬堀駅間が長大トンネルによるほぼ直線の新線に切り替えられた。しかし、単線でカーブの多い旧線は保津峡の車窓があまりにも美しかったので、このまま廃止とするのは惜しまれ、観光路線として復活することになった。
そして、トロッコ列車専用の鉄道として1991年から運行を開始したのが嵯峨野観光鉄道なのである。

嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車

観光鉄道なので、運行は年中無休ではない。車両のメンテナンスのため、冬季(1〜2月)は全面運休、繁忙期以外の水曜も運休なので、乗車する場合は、事前に運行日かどうか確かめたい。
運転区間は、JR山陰本線(愛称「JR嵯峨野線」)の嵯峨嵐山駅に隣接したトロッコ嵯峨駅とトロッコ亀岡駅の7.3km。観光トロッコ列車なので、25分ほどかけてのんびり走行する。
途中で、トロッコ嵐山駅とトロッコ保津峡駅の2駅に停車する。列車は、DE10形ディーゼル機関車とトロッコ客車5両で編成され、トロッコ嵯峨駅からトロッコ亀岡駅に向かうときはディーゼル機関車が最後尾になり推進運転、トロッコ亀岡駅からトロッコ嵯峨駅に戻るときはディーゼル機関車が先頭で客車を牽引する形となる。
列車は1編成しかないので、同じ列車が行ったり来たりしていて、途中駅での列車のすれ違いはない。
運行は1日に通常8往復で朝から夕方まで。紅葉のライトアップ時期には暗くなってからの臨時列車も運行される。

指定券について

人気の観光列車なので、指定券は大変取りにくい。全席指定で自由席はない。満席でも立席券が発行される場合もあるが、超満員の場合は諦めざるを得ない。
トロッコ嵯峨駅からトロッコ亀岡駅まで嵯峨野観光鉄道で行き、帰りは保津峡舟下りを楽しむというツアーがあるので、トロッコ亀岡駅発の列車のほうが予約を取りやすい。当日券の枠が若干あるので窓口で問い合わせることができるものの、席数は少ないので、繁忙期の当日券はあまり期待できないかもしれない。

料金は全区間同じ

片道、大人=630円(12歳以上)、小人=320円で全区間同一料金である。5号車は、リッチ号という窓ガラスのない車両で、雨の時は濡れるので覚悟の上乗車する。当日の払い戻しは、1枚につき手数料が220円かかる。

トロッコ亀岡駅に行ってみよう

それでは、実際に嵯峨野トロッコ列車に乗車しながら様子を案内してみたい。前述したように、トロッコ嵯峨駅発は大人気で予約が取れなかったので、トロッコ亀岡駅発に乗車した。
もっとも、舟下りと組み合わせるのでなければ、どちらに乗車するのも変わりない。むしろ、帰りのことを考えると、トロッコ亀岡駅発のほうが、その後の予定を組みやすいし、鉄道ファン的には、ディーゼル機関車が先頭の列車に乗るほうが汽車旅らしくてよい。

トロッコ亀岡駅はJR山陰本線の亀岡駅よりも馬堀駅のほうが近いので注意

まずは、列車の起点となるトロッコ亀岡駅に向かう。ここで気をつけなくてはならないのは、トロッコ亀岡駅は、JR山陰本線の亀岡駅とは遠く離れていて、馬堀駅が近いということだ。
近いということは、隣接しているのではなく、ゆっくり歩くと10分近くかかる。JR山陰本線の列車は、昼間は約20分毎なので、余裕をもって出かけたい。快速と特急は馬堀駅には停車しないので、亀岡駅まで行ってしまったときは、タクシーに乗るのがよさそうだ。
馬堀駅からトロッコ亀岡駅までの道はJR山陰本線の線路に沿って案内があるので迷うことはないだろう。JR西日本のサイトで予約を取ったときは、JRの駅でしか発券できないので、馬堀駅で手続きしておくことになるが、小さな駅なので、京都駅などの大きな駅であらかじめ発券しておくほうが無難だと思う。
トロッコの駅では発券できないので注意を要する。

トロッコ亀岡駅でドリンクやグッズを買うなら早めに

トロッコ亀岡駅はロッジ風の比較的大きな駅だ。トロッコ列車は1時間に1本なので、構内は広いけれど、発車間際には人でいっぱいとなる。ドリンクやグッズは早めに買っておいたほうがよい。
ホームは1面のみで、その先を山陰本線の列車が通過する。線路の間に信楽焼のタヌキが多数置いてあって楽しく迎えてくれる。

トロッコ亀岡駅発の列車に乗ってみた

トロッコ嵯峨駅から客車を先頭にした列車が到着すると、5分で折り返すので慌ただしい。降りた人と入れ替わりに乗車するので、あらかじめ乗車する号車を確認してホームに書いてある乗車位置で待っていよう。指定席を確認して座るとまもなく発車。実に忙しい。

実際の様子

トロッコ車両なので、木製の座席の向かい合わせ4人席。決して座り心地は良くないけれど、野趣溢れたトロッコ列車にふさわしいものであろう。まもなく、進行方向左側に保津川が現れ、列車に寄り添う。途中で鉄橋を渡るので、保津峡は前半が進行方向左側、後半が右側に見え、どの座席でも平等に車窓を楽しむことができる。

保津川下りの舟が見える

保津川の景観と線路際に立つ紅葉した木々。しばらくすると、「殿の漁場」を通過。昔、丹波亀山の殿様が釣りを楽しんだ場所で、水深は10mほど、保津川では2番目に深いところだそうだ。
やや長いトンネルを抜けると、保津川下りの舟が見える。手を振り合うのも楽しい。さらに進むと、川の真ん中に孫六岩という巨大な岩が見える。孫六という岩師が岩を砕こうとしたものの激流に呑まれ命を落としたという悲しい伝説がある。

紅葉狩りも楽しめる

山陰本線の鉄橋の下をくぐるけれど、この上には保津峡駅のホームがある。トロッコ列車の撮影スポットでもある。
少し進むとトロッコ列車は停車する。かつての山陰本線の保津峡駅で、現在はトロッコ保津峡駅という。駅前のつり橋を渡って山道を歩くと先ほどの保津峡駅に行けるけれど、かなり歩かなければならない。ホームには信楽焼のタヌキがいて微笑ましい。

保津川を渡ると……

やがて列車は唯一の保津川に架かる鉄橋を渡る。この先は、川は車窓右側に移るので、渓谷の眺めは窓越しには見ることができなくなる。
それでも、右側に座っている人の向こうにちらちらと景色の片鱗を眺めることは可能だ。意外にも立席なら両方の車窓が楽しめるので、25分立ったままなのを我慢できればメリットはある。

対岸に高級旅館「星のや京都」が見えるとの車内放送がある。舟での送迎がユニークな旅館で、旅館に敬意を表してか、列車は一旦停車。ゆっくりと動き出すと、トンネルに吸い込まれていく。
トンネルを抜けるとトロッコ嵐山駅に停車。ホームが短いため、乗っている車両によってはトンネルの中で停まってしまう。後部2両はドアは開かないのだ。
この駅では、ツアー客をはじめ多くの乗客が下車する。有名な竹林や天龍寺に行くならこちらの駅のほうが終点のトロッコ嵯峨駅より近いためだろう。こうした点はトロッコ亀岡駅発の列車に乗車する利点であろう。
発車すると、左から近づいてきた複線電化の山陰本線の線路に乗り入れる。ただし、下り線を逆走するので驚く。もっとも、安全対策も万全なので正面衝突などの心配はないと思う。とはいえ、複線の線路を右側通行で進むのは不思議な感じがする。
右手に竹林を見ながら進み、3分ほどで終点のトロッコ嵯峨駅に到着する直前にJR山陰本線の線路と分岐して専用ホームに滑り込んでいく。

トロッコ嵯峨駅での楽しみ方

トロッコ亀岡駅同様、トロッコ嵯峨駅も駅舎内は広い。トロッコ亀岡駅は狭くてディーゼル機関車の写真が撮りづらいけれど、こちらの駅ならゆっくりと撮影可能だ。観光地が目の前にあり賑わっているのでお土産やグッズを売るお店も広い。

トロッコ嵯峨駅構内

駅舎に隣接するSL Roman Café には本物の蒸気機関車4両が展示されているので、お茶しながら眺めるのも一興であろう。夕方まで時間があれば、嵐山界隈を散策し、京都の中心部へ戻るなら、JR山陰本線以外にも、嵐電が利用できる。
(文:野田 隆(鉄道ガイド))

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秋の紅葉のシーズンにもおすすめ! 絶景が魅力の嵯峨野観光鉄道「トロッコ列車」に乗ってみた

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