加藤勝信官房長官は16日の会見で、北朝鮮が前日に発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したことについて「わが国の安全に対する深刻な脅威だ」と述べた。

確かにその通りだ。だが、今回の発射が示した脅威はそれだけではない。北朝鮮のミサイル発射直後、当初はEEZ外に落下したと発表されていた。北朝鮮版イスカンデルと呼ばれるミサイル特有の変則軌道により、落下が困難だっただめだ。落下地点の予測が困難なら、それだけ迎撃も難しくなる。

さらに、ミサイルが列車から発射されたことも新たな脅威を示した。北朝鮮全国に張り巡らされた鉄道網を利用し、客車や貨車に偽装した発射台にミサイルを搭載すれば追跡が難しくなり、発射の兆候を把握するのはもちろん、反撃も難しくなるからだ。

ただし、列車型の発射台については、果たして有効な運用が可能なのか疑問もある。北朝鮮の鉄道の状態は、日本では想像もできないほど劣悪で、大量の死傷者を出す大脱線事故が繰り返されてきたからだ。

たとえば1996年には慈江道(チャガンド)で、屋根の上にも乗客が乗るほどのすし詰めの列車が谷底に転落、乗客の多くが死亡した。死者数は1000人から5000人に及ぶとの説もある。また1989年には、平壌から穏城に向かっていた列車が鉄橋から川に落下し、数百人から1000人が死亡したとされる。

さらに、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)では1997年、停車中だった火薬25トンを積んだ貨物列車5両が火災を起こし、大爆発を起こした。到着した通勤列車が巻き込まれ、3000人が死亡し、1万人が負傷したと言われている。

このような事故が繰り返されてきた原因は、大きくわけて3つある。

施設の老朽化と経済難による整備不良、そして安全意識の欠如だ。

列車の運行状況も慢性的なマヒ状態にある。北朝鮮では故金日成主席が示した方針に従い、1960年代から大々的な鉄道電化事業が繰り広げられ、全体の8割が電化された。世界最大級と言われた水豊ダムを擁し、石炭などの燃料も豊富だったので、鉄道を電化することは経済発展を目指す上で合理的と考えられたのだ。

ところが、1990年代以降の発電設備の老朽化、そして深刻な経済難により、極度の電力不足に陥る。そして高い電化率がアダになり、鉄道はマヒ状態に陥ってしまった。例えば首都・平壌から北部の恵山(ヘサン)までは、時刻表通りなら23時間ほどで到着するのに、実際には10日もかかった事例などが伝えられている。

こうした実情を踏まえると、米軍が偵察衛星などを用いて鉄道の補修状況などを探り、また列車ごとの運行頻度を観察することができれば、北朝鮮のミサイル発射意図をある程度は把握できるかもしれない。

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金正恩の「ミサイル発射」北朝鮮鉄道、脱線事故で死者1千人も

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