国土交通省が「都市鉄道の混雑率調査結果」を公表した。その数値の低さに驚きの声が上がった。COVID-19感染対策と、それに伴う緊急事態宣言、まん延防止重点措置などにより、外出自粛、通勤削減、リモートワークが呼びかけられた結果だ。

「痛勤電車」は過去になった?(写真はイメージ)

たしかに電車に乗ると、時間帯にかかわらず、「電車が空いている」と感じる。なんとなく混雑率は軽減されただろうなと思っていたが、実際に数値を見せられると、「これほどまでとは」と思う。目標とされていた「混雑率150%以内」を、算定基準となった路線がすべて達成した。その中には複々線化や増発が難しく、達成は遠い将来かと思われた路線も含まれている。

利用者にとって、電車は空いているほうがいい。だからこの結果は歓迎すべきだ。しかし、この低い混雑率は一過性の現象だろう。今後、移動需要が回復すれば混雑率は高まるはずだ。2019年度の数字には戻らないかもしれないが。

■すべての路線が150%以下に

混雑率の表を見るためにおさらいしておくと、「都市鉄道の混雑率」はピーク時間帯の乗客数を同時間帯に運行する電車の定員で割った数値だ。平均的な値であり、実態とは少し違う。同じ区間でも各駅停車より急行のほうが混んでいるし、電車の前方と後方でも混み具合は変わる。そういう事情は考慮されない。

調査期間は前年9~11月の1日または複数日。つまり、2020年度のデータは1回目の緊急事態宣言(4月7日~5月25日)の解除後、2回目(1月8日~3月21日)の発令前に集計された。比較対象となる2019年9~11月は、まだ日本でCOVID-19感染は確認されていない。平時である。

東京圏の混雑率ランキング(2020年)

満員電車による通勤通学はストレスであり健康的ではない、安全面でも問題であるという考えから、2000(平成12)年の答申「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策について」において、大都市圏における都市鉄道のすべての区間混雑率を150%以内とすることが目標とされた。ただし、東京圏については、主要区間の平均混雑率を150%以内、すべての区間の混雑率を180%以内とする目標を定めた。混雑率調査は「通勤通学時間帯の鉄道の混雑状況を把握するため」であり、目標の達成状況を精査する目的もある。

ちなみに、国土交通省の資料には、「100% – 全員が座席に座り吊り手かドア付近の手すりをつかめる」「150% – 新聞を広げて楽に新聞が読める」「180% – 折りたたむなど無理をすれば新聞を読める」「200% – 週刊誌程度なら読める」というイラストが添えられている。ただし、前述の通り、混雑率には列車の種別や車両位置の偏りは考慮されないから、参考にならない。混雑率の低い時間にもぎゅう詰めの車両はあるし、混雑率が高い時間帯でも各駅停車の最後尾車両は座れる場合もあるだろう。

このイラストに関して、国土交通省は2021年5月、別の資料で「150% – スマホの操作が楽にできる」「180% – スマホの操作がしにくくなる」「200% – 長い操作は難しい」と表現した。しかし実験的取組みだったようで、今回の混雑率調査は新聞と週刊誌のままだった。くどいようだが、いずれにしても計算上の表現で、実際に体感する混雑とは異なる。

これらの前提を踏まえて表を見よう。東京圏の2020年度の混雑度は、すべての評価路線で130%を下回った。目標値の150%よりずっと低い。最も混雑度の高い路線は都営三田線の129%。最も低い路線はJR中央・総武緩行線の60%だ。前年も99%と空いていたが、60%は「ガラガラ」といえる。

2019年度調査で混雑率190%以上だった東京メトロ東西線、JR横須賀線、JR総武緩行線、JR東海道線は大幅に改善し、100~120%台まで下がった。混雑度180%以上だったJR中央快速線、東急田園都市線、JR総武快速線も同様だ。

ほとんどの路線で輸送力は前年と同じ。各鉄道事業者は需要低迷対策と保線時間の確保のため減便しているものの、通勤時間帯は電車の運行本数や車両数は変えず、輸送力を確保している。なお、赤で示した東武鉄道は、輸送力を減らして乗客減対策を実施したようだ。青で示した小田急小田原線と西武池袋線は輸送力を少し増やしいる。

名古屋圏の混雑率ランキング(2020年)

公表資料には名古屋圏と大阪圏もある。どちらも2019年度の段階で150%以下を達成している。名古屋圏では名鉄名古屋駅より東側、西側で150%近い数値となっていたが、どちらも100%近くまで下がった。名古屋市営地下鉄名城・名港線は前年と調査区間が変わったため、輸送力が変化している。東海道本線の輸送力上昇はわずかだ。3月のダイヤ改正による車両の増減があったと推察される。

大阪圏の混雑率ランキング(2020年)

大阪圏も東京圏と比べて低い混雑率がさらに下がった。JR西日本の輸送力減少が目立つ。とくに東海道(快速)線は輸送力を半減させて、乗客減であっても混雑率98%を維持している。このあたり、臨機応変な車両運用で対応しているといえそうだ。

なお、今年度から調査対象が「三大都市圏」から「全国」に拡大された。そこで評価路線のうち、混雑率100%以上の混雑率をランキング形式で掲載する。この中には三大都市圏の区間も含まれており、全国レベルとの比較ができる。

全国で最も混雑する路線は、東京都交通局の新交通システム、日暮里・舎人ライナーで、これは定員が少ないことも影響している。新潟県のJR信越本線、広島県のJR可部線が東京圏トップの都営三田線より混雑しており、福岡県の西日本鉄道が本線ではなく貝塚線で上位にあることも興味深い。短編成ながら地下鉄に接続するところが人気なのかもしれない。

以下の表は、緊急事態宣言の対象になっていない地域も含まれるため、対象地域と比較する際は心得ておきたい。ただ、国が混雑率150%を目標としているとなると、逆に「混雑率150%までは減車、減便してもいい」という考え方もできそうだ。いずれにしても興味深いデータである。

全国の混雑率ランキング(1) (100%以上、2020年)
全国の混雑率ランキング(2) (100%以上、2020年)
全国の混雑率ランキング(3) (100%以上、2020年)

※写真はイメージ。本文とは関係ありません。

#電車


三大都市圏の鉄道混雑率が激減「全路線で指標達成」に驚く

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