既報の通り、KDDIは6月30日、JR東日本(東日本旅客鉄道)の「山手線(※1)」とJR西日本(西日本旅客鉄道)の「大阪環状線」の全駅のホームにおいて「au 5G」のエリア化を完了した。
同社は7月2日、鉄道駅や沿線における5Gエリア整備に関する説明会を開催した。5Gエリアの整備には、いろいろと考慮すべき事項が多いようだ。
(※1)ここでは系統として環状運転している「山手線」を指す(路線としての山手線は品川駅を起点として、新宿駅を経由して田端駅で終点となる)
●まずホームをエリア化 今後は沿線+他路線へ拡大
KDDIは、5Gのエリア化について「(数字で分かる)基地局の数も重要だが、“ここ”で(しっかりと)使える」ことを意識しているという。その表れの1つが、駅ホームにおけるエリア整備だ。
先述の通り、山手線と大阪環状線は全駅のホームが5Gエリア化され、現在は駅間のエリア化を進めているという。山手線と大阪環状線は、それぞれ東京圏、大阪圏の中でも利用客数の多い路線である。新しい通信規格が登場した際に、先んじてエリア化すれば、その恩恵にあずかれるユーザーもそれなりに多い。両線の駅におけるエリア化を優先して行う戦略は、ある意味で“正解”といえる。
同社では、関東地区では21路線、関西地区では5路線において駅ホームや沿線の5Gエリア化を進めるという(一部路線では区間の重複あり)。詳しい路線名と区間は、PDFファイルとして公開されているので確認してほしい。
拡大したエリアの告知にも工夫を凝らしている。先述の山手線や大阪環状線では、5Gの電波の“入り具合”の目安をWebサイトで公開している。「ホーム」「改札付近」「駅間」において、au 5Gが快適に使えるかどうかチェックできる。
●エリア構築には苦労も多い
au(KDDIと沖縄セルラー電話)が5Gで用いる電波には、28GHz帯の「ミリ波」、3.7帯の「Sub-6」、そしてau 4G LTEで用いている帯域を5G NR(5Gの通信規格)に転用した「NR化」の3種類がある。これらの電波の“使い分け”は、エリア構築において重要な要素の1つとなる。
周波数の高い電波は、従来は通信に使われることが少なかったこともあり、帯域幅を広げやすく、結果として通信速度も引き上げやすい。しかし、電波の直進性が高く、衰えやすい上に透過しにくいため、建物や起伏の多い場所のエリア化には不向きだ。
逆に、周波数の低い電波は回り込みやすく、衰えにくく透過しやすいため。広い範囲や建物の多い場所のエリア化に適している。しかし、他の通信に使われることも多いため、使える帯域幅が狭く、結果として通信速度を引き上げにくい。
端的にまとめると、通信速度が求められる場所や人やデバイスが密集しやすい場所はSub-6やミリ波で、通信できる場所を広く確保することを重視すべき場所ではNR化した帯域でエリアを構築する、という使い分けが理想といえる。
基地局のアンテナを設置する際には、周波数の高低を問わず“見通し”が良い場所に置くことが理想ではある。しかし先述のように、高い周波数帯の電波は、は建物や起伏が障害となりうるため、利用者により近い場所にも基地局(アンテナ)を設置することで品質を高めている。
3.7GHz帯はさらなる苦労が
Sub-6で用いる帯域のうち、3.7GHz帯は別の困難も抱えている。
この帯域は「宇宙無線(衛星)通信」でも使われている。具体的には、海外の衛星放送(国際放送)で用いられることが多い。そのため、3.7GHz帯の5G基地局を宇宙無線通信の地球局(地球側の送受信設備)の近くに設置すると、相互に干渉してしまう。
そのため、3.7GHz帯の基地局を設置する場合は、事前に既存の免許人(地球局の運用者)と交渉が必要なこともある。その上で、干渉対策を施さなければならない。
干渉対策は、主に基地局アンテナから発する電波の「出力(強さ)」「指向(方向)」「チルト角(角度)」を調整することで実施する。宇宙無線通信への干渉を避けつつ、5G通信のパフォーマンスをできる限り発揮できるように調整するのは、エリア設計者の“腕”の見せ所でもある。
●「パケ止まり」対策も欠かせない
現在の5Gネットワークは、LTEネットワークと協調して動作する「NSA(ノンスタンドアロン)構成」となっている。NSA構成では、5G通信中もLTE通信が“待機”する。5Gの電波が弱くなった場合、LTE通信が補完して通信が継続される。しかし、5Gの電波が弱まった際に、5G基地局が通信をムリに継続しようとすると、データのやりとりが進まなくなることがある。
この「パケ止まり」現象は、競合のNTTドコモにおいて報告を多く見かける。しかし、理論上はauを含む他のキャリアでも起こりうるものだ。
KDDIでは、5G基地局のパラメーターを随時調整することで、パケ止まりが極力発生しないように取り組んでいるという。「高速な通信」と「つながることによる快適さ」のバランスをうまく追求しているようだ。
●駅ホームのエリア化はどうやっている?
今回の説明会では、山手線の駅における5Gエリアの整備状況も取材できた。
ホーム上は、3.7GHz帯に加えて3.5GHz帯(4G LTEからの転用)を使ってエリア化されている。基地局やアンテナの設置場所や数は、駅の乗降客数やホームの形状によって異なる。
肝心の通信速度だが、アンテナを見通せる場所であれば下り1Gbps以上で通信できる。動画のダウンロードも快適にこなせそうである。
●5Gのメリットを“可視化”する取り組みも
5Gのメリットは数値だけでは示しづらい。そこでKDDIではau 5Gユーザー限定でユーザー体験を向上する「au 5Gエクスペリエンス」を提供している。
今回の説明会では「XR CHANNEL」で提供されている、スヌーピーとau 5Gとのコラボレーション企画「5Gエリアに出現! ARスヌーピーに会いに行こう」も体験できた。この企画は、au 5Gエリアに行ってXR CHANNELアプリのAR(拡張現実)カメラを使うと、場所や日時に応じてスヌーピーと一緒に写真を撮れるというものだが、au 5G端末を使って見ると「特別なスヌーピー」に出会えるという。
ARデータのやりとりには大量の通信が発生するが、5Gを使えばそれも楽である——数字がなくても5Gのメリットを体感できるのは確かだ。

#KDDI #東日本 #山手線 #西日本


5Gのエリア整備の苦労は? KDDIが「鉄道路線5G化」に関する取り組みを説明

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