2015年3月、北陸新幹線が金沢駅まで延伸開業。東京~金沢間が新幹線で結ばれ、「北陸ブーム」が起こった。とくに城下町としての情緒を残す金沢へ、観光客が押し寄せることになった。その一方で、福井県にはいまだ新幹線が延びておらず、北陸新幹線の効果は限定的になっている。

福井駅西口広場に設置された大きな恐竜のモニュメントが来街者を驚かせる

北陸新幹線は、東海道新幹線とともに東京・大阪の東西両都市を結ぶ高速鉄道網として構想され、おもに日本海側の自治体から多くの期待を集めた。福井県もそのひとつ。新幹線開業による経済的な恩恵を得ようと、全県で一丸となっている。北陸新幹線が金沢駅まで延伸した頃、少しでも早く開業させたいという思いから、途中の福井駅まで前倒しで暫定開業させるように打診したこともあった。

福井駅までの暫定開業はかなわなかったが、福井駅周辺では北陸新幹線の延伸工事が急ピッチで進められている。工費の高騰や新型コロナウイルス感染症の影響などもあって、開業予定は先延ばしされることが決まったものの、それで福井が気落ちすることはない。

近年の福井は、国際観光都市として人気の高い金沢に近いこともあり、観光面において金沢の影に隠れがちだった。しかし1982(昭和57)年、福井県勝山市の地中から新種の恐竜の化石が発掘されたことをきっかけに、状況は少しずつ変化していく。

福井駅西口広場に恐竜の足跡をかたどったレプリカも

学術的な研究が進むにつれて、福井県全域で発掘される恐竜の化石は評価が高まり、それとともに福井は「恐竜の街」としても知られるようになる。2000(平成12)年には、勝山市に恐竜博物館が開館。「福井×恐竜」のイメージはいっそう強くなった。

福井市でも恐竜を観光資源として打ち出し、2016(平成28)年には福井駅西口広場前のリニューアルに合わせ、動く恐竜のモニュメントを設置。観光客の度肝を抜いている。

恐竜を観光コンテンツとして力を入れる一方、福井市は新たな食の開発にも余念がない。日本海に面しているため、越前ガニなどの海産物が有名だが、これまで福井名物といえばソースカツ丼やおろしそばなど、海鮮とは縁遠い料理が多かった。

福井市内の松本公民館の傍に建立された「コシヒカリ育成の地」碑

米の銘柄として屈指の知名度を誇るコシヒカリは福井県が発祥とされるが、一般的には新潟県のイメージが強い。福井市は2011年以降、コシヒカリを超える新しい銘柄米の開発に着手し、昨今は新品種「いちほまれ」のPRに全力を傾けている。

福井県は海産物と美味しい米を味わえる土地柄だが、うまくPRできていない。そうした反省から、食を大々的にPRするプロジェクトが発足している。「福丼県」は文字通り福井県をもじったプロジェクト。福井の地場産品を用いた丼メニューを開発し、福井の食を積極的にアピールする。奇しくも福井は篆書体で「福丼」と書く。篆書体で「福丼」と刻まれた碑も残っているという。

福井県には、福井市を中心に「オレンジBOX」「オレボステーション」といったコンビニとスーパーを合体させたような店舗を展開する大津屋という企業がある。同社は福井駅前に立地する複合商業施設「ハピリン」内に「これがうまいんじゃ大津屋」を構え、郷土料理や地場産の海の幸・山の幸、日本酒などを販売。来街者に福井を大々的にアピールする効果を発揮している。

大津屋は福井市内を中心に「オレンジBOX」などの店舗を展開
福井駅西口の複合商業施設「ハピリン」

こうした食への取組みのほか、市内を観光するための交通網の整備も進む。前述の通り、福井市の顔でもある福井駅西口は2016年に駅前広場がリニューアルされた。あわせて福井鉄道ののりばも西口駅前広場に移設され、それまで「福井駅前」としていた停留場名を「福井駅」に改称した。

福井鉄道はJR北陸本線と南北に並走する福武線と、途中の福井城址大名町停留場から福井駅停留場へと延びる支線で形成されている。以前は通常の鉄道車両と同じ大型の電車が走っていたが、近年は路面電車タイプの車両を導入。「FUKURAM」(フクラム)の愛称を持つスタイリッシュな最新鋭車両が増え、市民の生活の足として活用されるほか、観光客からも好評を博している。

福井駅停留場に停車中の福井鉄道「FUKURAM」
北陸新幹線の開業を控え、工事が進む福井駅東口

福井に限った話ではないが、地方都市は全般的に自家用車を前提とした街になっている。福井鉄道は駅前に駐車場を完備し、自宅から最寄駅まで自家用車、そこから市街地まで電車といった具合に交通手段を組み合わせるパークアンドライドを奨励している。2016年には、福井鉄道とえちぜん鉄道の相互直通運転も開始。福井駅を中心としたまちづくりを進めることで、駅前市街地に再び人の流れを取り戻そうとしている。

現在、福井駅周辺の繁華街は西口側に偏っている。東口側は駅前広場こそ整備されているものの、駅前から少し離れただけで自然豊かな街並みが広がる。西口と東口は対照的だが、東口では北陸新幹線を受け入れる工事が進んでおり、いずれ東口も姿を変えることになるだろう。

北陸新幹線の開業を控え、福井駅は大きく変わろうとしている。

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北陸新幹線に高まる期待、恐竜PRし食への取組みも – 福井駅(後編)

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