JR東日本は11日、「チケットレス化・モバイル化を推進し、『シームレスでストレスフリーな移動』の実現に向けた乗車スタイルの変革を加速します」と発表した。この中で、「2025年までに300駅でみどりの窓口を削減」と読める表記があり、話題になっている。むしろこの部分だけが強調して報じられているようだ。「JR東日本は厳しい経営状況にあり、コスト削減が急務」「人員削減が目的」というような。

JR東日本は2025年までに、「みどりの窓口」設置駅を140駅程度まで減らすという(写真はイメージ)

これをすぐさま批判する論調は安直すぎる。JR東日本が発表したニュースリリースは5ページにわたる。報道はほんの一部だ。窓口閉鎖だサービス低下だと反射的に騒ぐ衆愚に乗らないで、まずは落ち着いて読み解きたい。

発表されたニュースリリースには、インターネット予約発券やモバイル対応などの普及によって、「みどりの窓口」の利用が減ったという背景がしっかり説明されている。また、人員配置した「みどりの窓口」は取りやめるとしても、遠隔対話型の「話せる指定席券売機」を設置するというから、窓口を完全に閉鎖するわけではないこともわかる。

1日に数組以下、あるいは1組も客が来ない窓口を開け、人を配置しておくという状況は非効率だ。仕事をしない人に給料を出すという状況は、他部門の働く人から見れば不平等であり、企業統治上で問題がある。座っているだけで仕事がないという状況は本人だって居心地が悪い。それが許される職場は役所の市民サービス窓口くらいだろう。民間企業がやるべきことではない。

筆者の住まいの近くでは、24時間営業だったコンビニエンスストアが深夜早朝営業を辞めてしまった。代わりの飲料販売機はある。しかし軽食自販機はないし、公共料金の支払い機もない。ATMさえ真っ暗な店内で、液晶パネルだけ光っている。コンビニとしての機能はほとんど使えない。それに比べれば、JR東日本の施策は遠隔対話可能な販売システムがあるだけ良心的といえる。それでも、あえて問題点を挙げるとすれば2点ある。「代替手段は使いやすいか」「代替手段を利用できない人は救済されるか」だ。

■代替手段は使いやすいか

JR東日本は2001年から、ICカード乗車券「Suica」を導入した。それから20年。「Suica」が普及したことに誰も異論はないだろう。JR東日本のニュースリリースには、「近距離ではSuicaのサービス開始以降、多くのお客さまに券売機に立ち寄ることなくご利用いただいています」とある。実際に都内の某駅で観察したら、自動改札機にきっぷを通す人はとても少ない。たまに見かけても、少し大きなサイズの長距離きっぷの利用者だ。

その長距離きっぷと定期券を購入する人が、「みどりの窓口」のおもな利用者だった。JR東日本のニュースリリースによると、「近距離以外のご利用においては、約8割が、みどりの窓口以外のきっぷの販売サービスにより、ご購入いただいています」とのこと。円グラフが添えられており、「みどりの窓口」以外のきっぷ購入について、2010年度は約50%、2019年度は約70%、2020年度は約80%となっていた。この数字だけ見れば、もはや「みどりの窓口」は終息へ向かっている。

現在、JR東日本の「みどりの窓口」は首都圏の231駅、地方圏の209駅にある。それを2025年、つまりあと4年でどちらも70駅程度とし、計140駅程度にする。約7割の有人窓口削減は、約8割の利用者が窓口を利用しないという現実から見ても、需要に見合った施策といえる。JR東日本としては、「みどりの窓口」以外の利用者を100%に近づけたい。「他の手段も使えるけれど、駅にみどりの窓口があるならそこでもいい」という人も他の手段へ移行してもらいたい。

そのためには、「他の手段」をもっと便利にして、あるいは値引きやポイントなどの特典を付けるなどして誘導したい。そこでインターネット予約サービス「えきねっと」や「モバイルSuica」「タッチでGo! 新幹線」の機能強化、そして高機能券売機の導入となった。これらはほとんどの長距離利用者の期待に応えられる設計になっている。対話型高機能券売機であれば、相手は人間である。自分と同じ空間にいるか、回線の向こうにいるかの差しかない。

我が身を振り返れば、ここ数年、「みどりの窓口」を使っていない。「えきねっと」ときっぷ受取機で用が足りる。そんな人が圧倒的に多いと思われる。JR東日本の近距離ユーザーのほとんど、長距離きっぷユーザーの8割にとって、サービス低下ではない。

■代替手段を利用できない人は救済されるか

「えきねっと」については改良の余地がある。まず、寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」の寝台券を買えない(指定席扱いの「ノビノビ座席」は購入可能)。他にも対応していないイベント列車があるようだ。

そして、きっぷのルールに詳しい人にとって、凝ったルートのきっぷに対応できない。

たとえば「新横浜→大阪→糸魚川→松本→東京→新横浜」というひと筆書ききっぷは発券できない。「発駅と着駅が同じきっぷは非対応」「経由駅は3駅に制限されている」「山科~大阪間の往復分を連続乗車券にできない」などが理由になっている。新横浜~金沢間で大阪経由とした場合も、山科~大阪間の往復分を分割するという気の利いたことはしてくれない。わざわざ福知山・東舞鶴経由の片道きっぷを表示し、「これ以外のルートは駅などでお求めください」となる。チャット機能を搭載して、「話せる指定席券売機」のような細かな対応をお願いしたい。

そもそも、新幹線以外のきっぷもネットで購入してスマホにダウンロードするか、プリントアウトと決済したクレジットカードで認証して乗せてほしい。と、IT知識レベルの高い人は思うだろう。しかし、IT技術に依存しすぎると、IT技術になじまない人々を取りこぼすかもしれない。救済手段が必要になる。

ITを使いこなせない人にとって、「みどりの窓口」以外の代替手段は使えるだろうか。「話せる指定席券売機」であれば、ほとんどの要望に添えるだろう。証明書などの書類を読み取る装置があれば、複雑なルートのきっぷも図を示せば理解してもらえる。

そうでなければ、「みどりの窓口」のある駅が最後の砦になる。そのような人に対しては、「みどりの窓口」がある駅まできっぷを無料にするとか、割り引くといった対応が必要かもしれない。大したコストアップにはならないだろう。現状でJR東日本の利用者の2割以下。「その他の手段」を便利にするほど減っていくからだ。

あるいはいっそのこと、もっとアナログな遠隔窓口を作る方法もある。たとえば「テレフォンショッピング方式」。昼間のテレビを見ていると、年配者向けの健康食品、家電などの通販が多い。「いまから30分、電話オペレーターを増やして対応します」という。「話せる自動券売機」よりも、話せるテレフォンショッピングのほうが自宅で手配できるから楽だろう。きっぷは郵送すればいいし、決済方法も代引き、クレジットカード、振込み、コンビニ決済などを選べる。

余談だが、筆者の母はスマホの操作に迷ってばかりなのに、テレフォンショッピングは使いこなせるようで、通信販売でフリーズドライの味噌汁やアクセサリーなどを購入している。あるいはコンサートチケットや高速路線バスのように、コンビニできっぷを購入できるようにしたらどうだろう。

JR東日本の発表は「みどりの窓口を140にする」であり、「みどりの窓口を将来的にゼロにする」と言い切ったわけではない。現状を鑑みて、「みどりの窓口」を減らすとも読めるが、これからの4年間で「えきねっと」「話せる指定席券売機」をもっと進化させてほしい。そして、「誰もが列車で移動する自由」を確保していただきたい。少数でも顧客を切り捨てるような施策をとれば、そこから鉄道離れは加速するだろう。JR東日本をはじめ鉄道事業者は重々承知と思うが、筆者は少し心配している。今回のJR東日本の発表が、まるで「IT弱者切り捨て」のように後ろ向きに受け止められたら残念だ。

#駅 #JR東日本 #Suica #PASMO #ICOCA


JR東日本「みどりの窓口」大幅削減は「前向き」か「後ろ向き」か

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