JR四国が観光列車「伊予灘ものがたり」のリニューアルを発表した。現行のキロ47形2両編成による運行は2021年12月末日まで。来春からキハ185系改造の新車両を3両編成で投入する。車両の老朽化というよりも、堅調な人気を誇る「伊予灘ものがたり」のグレードアップが目的と思われる。

JR四国が「伊予灘ものがたり」のリニューアルを発表。現行車両(キロ47形)は今年12月をもって引退となる

「伊予灘ものがたり」の誕生は2014年だった。特別な内装や食事サービスを提供する観光列車は2011年から増加しており、「伊予灘ものがたり」は後発組といえる。それだけに、先輩格の観光列車をよく研究していた。和モダンの内装は居心地が良く、アテンダントの対応も上品で親しみやすい。何気ない会話も心地良い余韻がある。

予約制の食事メニューとして、沿線の名物、食材を取り入れた創意工夫の料理を提供する。1日4本の運行で、すべて異なる食事メニューを用意している。

筆者が初めて乗ったときは、朝食メニューに味噌汁が付いていた。特産の豆味噌を使った甘みのある味わいと温かさに感動した。食堂車付きの寝台特急「北斗星」「カシオペア」が廃止されて以来、車内の食事といえば常温メニューや弁当が多かっただけに、車内で提供される温かい食事に高級感があった。予約なしで楽しめるカフェメニューも数多く用意されていた。食事の予約をしなくても格下感がなく、贅沢な気持ちになれるから、満足度は高い。

運行コースも吟味されている。車窓は伊予灘の海だけでなく、内陸部の肱川の車窓も雄大で、運行される時間帯や季節によって景色が変わる。リピーターも多いと聞く。観光列車のランキング企画などでも、「伊予灘ものがたり」は常連となっている。それだけに、魅力度を上げるリニューアルも納得だ。これ以上を作るハードルは高いが、新しい「伊予灘ものがたり」にも期待したい。

■観光列車「出世魚」の法則

「伊予灘ものがたり」などの観光列車は全国に約120種類ある。増えたきっかけは九州新幹線の開業だろう。JR九州は2004年の新八代~鹿児島中央間開業時に「いさぶろう・しんぺい」「はやとの風」、2011年の全線開業時に「A列車で行こう」「あそぼーい!」「指宿のたまて箱」を誕生させた。いずれも九州新幹線の誘客と観光振興の目的があった。これらの列車を参考に、全国で次々に観光列車が増殖していく。

各地で観光列車が増殖した背景にはもうひとつ、余剰となった中古車両の再利用があった。国鉄時代に製造された気動車や電車は丈夫に作られていた。しかし、性能は新型車両に劣るため、第一線から退いていく。そこで速度にこだわらない観光列車に再利用しようというわけだ。車両を新造するより低予算だし、食事メニューや乗車記念品販売などで運賃以外の売上も得られる。鉄道会社にとって、観光列車は新たな収入の源になった。

ただし、中古車両を再利用すれば、車両の老朽化が付いてくる。内装はリフォームしても、車両本体の躯体や動力装置が老朽化すれば、安全性を保てない。ここが観光列車の運命の分かれ道となる。車両ごと廃止するか、新たな車両で存続させるか。観光列車の成績が良ければ、利益を見込んで新たな車両を手当てする投資も可能。しかし、現状はそこそこの成績であっても、新たに投資するほどではない、となれば運行終了となる。

観光列車の成功例として、筆頭はJR東日本の「リゾートしらかみ」。五能線を走る観光列車は「ノスタルジックビュートレイン」から始まり、キハ47形を改造した「リゾートしらかみ」にリニューアルされ、現在は新造のハイブリッド車両HB300系を投入している。まるで出世魚のように進化した。同様に、羽越本線などを走る観光列車も、485系を改造した「きらきらうえつ」から、HB300系の「海里」に進化している。JR西日本では、山陰本線の「みすゞ潮彩」が「○○のはなし」に、北近畿を走る「天空の城 竹田城跡号」が「うみやまむすび」に再改造された。

下灘駅に停車中の「伊予灘ものがたり」

「伊予灘ものがたり」は平均乗車率8割以上という大成功の列車だけに、進化も納得がいく。新しい車両は特急形気動車キハ185系を改造するとのこと。もともと普通列車用に製造されたキハ47形に比べて、特急用車両だから乗り心地が良い。キハ185系はデッキと客室が分離されているから車内は静かだし、ディーゼルエンジンの排煙臭が漂うこともない。

「伊予灘ものがたり」の第2弾として運行開始した「四国まんなか千年ものがたり」は、キハ185系を使用しており、高級感があって趣も感じられる。キハ185系を改造した新たな「伊予灘ものがたり」も期待感が高まる。

■現行車両は廃車? それとも…

「伊予灘ものがたり」のリニューアルは車両の老朽化によるものと報じられている。しかしJR四国の報道資料によれば、「初代伊予灘ものがたりの引退」とのことであり、車両そのものが引退するかどうかは明確でない。そこで「伊予灘ものがたり」の現行車両キロ47形の去就が気になる。

キハ47形を含むキハ40系を観光列車用に改造した車両は、現役で活躍する仲間も多い。JR東日本では「越乃Shu*Kura」「ビュースター風っこ」など、JR西日本では「etSETOra」「○○のはなし」「花嫁のれん」など、JR九州では「指宿のたまて箱」「或る列車」などが活躍している。一方でJR東日本の「リゾートうみねこ」「リゾートみのり」のように、廃車となった車両もある。

「伊予灘ものがたり」として、あれだけの内装をしつらえた車両を廃車にするとは、もったいない気がする。そもそも今回のリニューアルの目的も、「伊予灘ものがたり」の魅力度アップが主題のようだ。新型車両2700系の追加投入により、キハ185系が特急用車両としては引退し、余剰となる。ならば「伊予灘ものがたり」向けに再利用しようということかもしれない。

「伊予灘ものがたり」の現行車両キロ47形の今後は?

もし「伊予灘ものがたり」のキロ47形を廃車しないならば、牟岐線や徳島線の新たな観光列車として再利用してほしい。とくに牟岐線で運行すれば、阿佐海岸鉄道DMVに連絡でき、より楽しい鉄道旅になりそうな気がする。あるいは予讃線の八幡浜~宇和島間はどうか。新しい「伊予灘ものがたり」と予土線の観光車両をつなぐ列車にできるだろう。

新しい「伊予灘ものがたり」へ期待するとともに、現行車両の再利用もお願いしたい。

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JR四国「伊予灘ものがたり」車両更新が決定 – 観光列車成功の証

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