この春、実施された「終電繰り上げ」には意外な反応…

■コロナ禍で鉄道事業を取り巻く環境は激変
今回は、日常生活における重要な交通手段であり、また観光やレジャーにおいてはその楽しみの一つともなる「鉄道」を中心とした交通について、生活者の意識を読み取っていきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う利用者の減少により、鉄道事業の経営も全般的に見て大変厳しい状況になっていると伝えられています。例年春に実施される鉄道のダイヤ改正においても、今年は多くの路線で終電の繰り上げや減便が行われたことが話題になりました。また、コロナ禍を機に広まったテレワークやオンラインの遠隔会議等のために、コロナ収束後も通勤や出張需要は戻らないとする見方もあるなど、事業を取り巻く環境も激変のさなかにあると言えるでしょう。

とはいえ「鉄道」は、私たちの生活に深く関わるものであることも確かです。人口密度の高い都市部においては、多くの人にとっての主要な交通手段であり、まさに動脈としての役割を担っていると言えます。また、地方部においては人口減少や災害からの復旧断念による路線廃止などがニュースになることがありますが、そのたびに地域の活力への影響が取りざたされるなど、「鉄道」は単なるインフラを超えた存在ともいえます。

また、近年ではコンパクトシティや持続可能な”まちづくり”に、環境性能にも優れたLRT(ライトレール)と呼ばれる次世代型路面電車が寄与する可能性なども注目されており、実際に栃木県宇都宮市〜芳賀町では23年度の開業を目指して工事が進められるなど、話題に事欠かないコンテンツでもあります。

そのような「鉄道交通」に対して、生活者はどのような意識を抱いているのでしょうか。日常的に利用し、当たり前のように接する方の意識と、むしろ自動車交通がメインである方における意識は恐らく違うことでしょう。また、今(コロナ禍の状況)と未来(LRTなどの可能性)を把握しておくことにも価値がありそうです。

今回、CCCマーケティング総研では2022年2月22日〜3月1日にかけて、1,830人(※)のT会員の皆様を対象にアンケート調査を実施しました。ここからは、都市圏・地方圏という区分を主な切り口に、その利用状況や、鉄道交通の今と未来に対する意識を読み取っていきたいと思います。

※全1,830人のうち、都市圏895人、地方圏935人
※都市圏‥東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋圏(岐阜県、愛知県、三重県)、大阪圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)の計11都府県
※地方圏‥上記の都市圏以外の計36道県

都市圏と地方圏で、その利用状況には4〜5倍の差

まず初めに、純粋な集計として「鉄道交通」がどの程度利用されているのかを見ていきたいと思います。<図1>は“最近6ヶ月くらい”における鉄道の利用頻度を質問し、都市圏・近郊、都市圏・郊外、地方圏・近郊、地方圏・郊外の4区分で比較したものです。(近郊/郊外の定義は図中の記載をご参照ください)

“最近6ヶ月くらい”の間には、GoToキャンペーンにより旅行需要が一時的に回復した時期も、その後の緊急事態宣言再発令期間も含むため、結果を単純に語ることは難しい面はありますが、概して、都市圏・近郊>都市圏・郊外>地方圏、という利用状況になっていることは明確に見て取れます。

都市圏・近郊では合計5割程度の人が少なくとも週に1日程度以上は利用しているのに対して、地方圏では月に1度の利用にも満たない人が8割を超えており、その利用状況には大きな差があります。また、週当たり平均利用日数(換算値)からも、都市圏・近郊が2.10日、都市圏・郊外が1.61日あるのに対して、地方圏では0.36〜0.40日程度であり、その利用状況(日数換算)は約4〜5倍の差があることが分かります。

この都市圏・近郊>都市圏・郊外>地方圏、という利用日数の関係性は、ほぼそのまま鉄道交通に対する意識の強さに関係してくるようです。<図2>は「鉄道交通」に対する印象評価を伺ったものですが、すべての項目において都市圏・近郊の評価が最も高く、全般に都市圏>地方圏という傾向が表れていることがわかります。

中でも「利便性認識」「不可欠性認識」の各項目で、利用頻度の高い都市圏での評価が高いことには納得感が高いのではないでしょうか。また、「各地域の状況」を見ると、やはり都市圏・近郊における利用環境の整備が先行していることが伺えますが、そのことが評価をポジティブに押し上げている側面もありそうです。

この春の「終電繰り上げ」は、便利すぎた生活の調整?

続いて、この春のダイヤ改正において多くの路線で実施された終電の繰り上げや減便についての意識を見ていきたいと思います。<図3>は、新型コロナウイルス感染症に伴う「鉄道交通」への影響についての印象を尋ねた結果です。

都市圏・近郊に着目すると「減便や終電の繰り上げは、自分自身にとって影響が大きい」という意識がやや高い一方で、「利用者が減っているからやむを得ない」「影響が収まった後も続いても構わない」「働き方やライフスタイルを見直すきっかけになる」「生活様式が変化したのだからむしろ自然」といった意見も、むしろ他の地域より高いことがわかります。さらには「新型コロナウイルスの影響が収まったら、元通りになることを望む」は地方圏に比べて10ポイント以上低いという結果まで出ました。

この図からは、都市圏の方が今回の変化を冷静に受け止めている様子がうかがえます。都市圏の方がテレワークの浸透率が高いと言われており、そのことがライフスタイルの変化に受容的に働いている側面もあるかもしれませんが、一方では、遅い時間の終電などの”便利すぎた”生活の調整と受け止めている可能性もあるのではないかとも感じられます。

もう一点、「新型コロナウイルスの影響が収まったら、元通りになることを望む」のスコアが地方圏において高いことも特筆すべきポイントと言えそうです。先述のように利用頻度があまり高くない人々においてこの意識が高いことは一見意外に感じますが、これには観光需要の回復や地域の活性化といった期待と、現在の状況が続くとさらなる利用者の減少から路線の廃止といった議論につながりかねないといった危機感の両面が関係しているのではないかと考えられます。

LRT(ライトレール・次世代型路面電車)は総論賛成だが、自分の地域には… 導入のカギは?

LRT(ライトレール)は次世代型路面電車とも呼ばれており、欧州の主要都市では既に広く普及している交通システムです。日本でも富山市などで既に導入されているほか、前述のように宇都宮市〜都賀町でも開業に向けた工事が進められています。

そのメリットとしては、地下鉄などと比較して建設コストが格段に安く早く開業できること、バスなどよりも大きな輸送力を発揮できること、街中に乗り入れられるため交通弱者である高齢者などでも利用しやすいこと、さらには鉄道特有の環境負荷の少なさ(※)など、数多くの要素が挙げられており、コンパクトシティ構想の実現や、渋滞などの都市交通問題解消への貢献も期待されています。
※国土交通省公表のデータによると、鉄道が1人を1km運ぶ際の二酸化炭素排出量は、自家用車の約1/8、バスの約2/5

今回のアンケートでは、LRT(ライトレール・次世代型路面電車)に関して、その導入についての賛成/反対意見や、導入にあたってどのような要件が揃う必要があるか、についても質問しました。なお、アンケートにおいては、上記のメリットなどについての前提条件を簡潔に示したうえで質問をしています。

<図4>はLRTの導入を進めるべきと思うかについて「一般的に」「自分の地域に」の2つの観点で質問した結果を示したものです。

まず、都市圏と地方圏とを見渡すと、導入意向自体に大きな差はないようです。ただし、それぞれの中で近郊と郊外を比較すると、それぞれ近郊の方が7〜10ポイント程度導入意向が高いことが分かります。「自分の地域に」の差が、ほぼそのまま「一般的に」の差として表れているとも言えますが、このことは、それぞれの地域にお住まいの方が自分の地域の交通の問題を基準に、一般的な意見を述べている証左と言えるかもしれません。

そして何より目立つのは、一般的にと言われると6〜7割が賛成を示すのに対し、自分の地域について聞かれるとその割合が4〜5割に留まる点でしょう。各地によって状況は様々と思われるため一概には言えませんが、自分の地域への導入にはやや慎重な様子が見て取れます。

この“自地域への導入に慎重な様子”を「差分」(一般スコアから自地域スコアを引いたもの)として、都市圏・地方圏それぞれ性年代別で見比べたものが、<図4>下部の表となります。これを見ると、都市圏では緩やかとはいえ年代が高いほど差分が小さい(≒自地域への導入に比較的前向き)な傾向があると言えそうです。
<図5>は、LRT導入にあたってどのような要件が揃う必要があるかを聞いた結果です。いくつかの項目で質問した結果、「都市圏でより求められる要件」「地方圏でより求められる要件」「同程度求められる要件」の3つのグループに分けられることが分かりました。

「都市圏でより求められる要件」には、騒音・振動対策や景観との調和といった“環境面”、道路そのものの拡幅や交通ルールの整備といった“共存時の安全性の確保”に関する要素が挙げられました。また、多頻度運行についての要望も高く、“鉄道と同等の利便性”を意識しての回答となっているのかもしれません。

一方、「地方圏でより求められる要件」には、パークアンドライドやポイント付与などの“利用促進施策”、停留所設定や周辺バス路線の整備といった“自動車交通の代替としての利便性”に関するものが挙げられたと言えそうです。また「同程度求められる要件」には、“導入プロセス”や“周知・広報”といった要素が挙げられました。

現時点で国内においては、中規模都市に適したシステムという印象が先行しているようにも感じられるLRTですが、上記のような細かいニーズの違いがあることは、より幅広い都市に適応できる交通システムとしての可能性を示しているとも言えるのではないでしょうか。

今回は「鉄道交通」に焦点を当てたアンケートを取り上げました。冒頭にも述べた通り、鉄道事業を取り巻く環境はコロナ禍をきっかけに大きく変わりましたが、それは同時に生活者のライフスタイル転換への対応や、さらに長期的な人口減少への対応、それに関連しての都市計画との連動など、交通手段そのものとしての柔軟性が求められるようになったと言い換えることもできそうです。「鉄道交通」が今後も発展を続けていくにあたって、今回のアンケートが少しでもそのヒントになれば、と願う次第です。

【調査設計】
調査地域 :全国
調査対象者:男女・20〜69歳
サンプル数:1830サンプル
調査期間 :2021年2月22日(月)〜3月1日(月)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)
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#コロナ禍 #終電 #環境 #日常


【CCCMK総研レポート】コロナ禍で変革期にある「鉄道交通」 生活者はその今・未来をどう感じている?

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