コロナ禍にあっては、本格的な鉄道旅行はままならない。ましてや遠くのローカル線に乗りに行くのも無理な状況だ。ならば、近くの穴場的な路線で静かにローカル線気分を味わうのはどうだろうか? ここでは首都圏でのどかな雰囲気を楽しめる「ローカル線」をご紹介しよう。

1. JR鶴見線(鶴見〜浅野〜武蔵白石〜扇町、浅野〜海芝浦、武蔵白石〜大川)

JR鶴見線は沿線の工場地帯の貨物輸送、通勤輸送のために敷かれた路線だ。もともとは鶴見臨港鉄道という私鉄だったので、独自の雰囲気を醸し出している。電車は朝夕のラッシュ時は頻繁に運行されているけれど、平日の昼間や土休日は本数が少なく利用者もまばらだ。それゆえ、のどかなローカル線的なムードがあり、知る人ぞ知る人気路線なのだ。以下、楽しめるポイントを列挙してみたい。

JR駅の中にさらに改札口が

まずは、鶴見駅。JR京浜東北線から乗りかえようとすると同じJRなのに改札口がある。元々は私鉄だった名残と、鶴見線の駅はすべて無人駅なので、ここで切符のチェックをするためでもある。
構内はコの字型のホームから成り立つ小ぢんまりとしたターミナル駅になっていて、天井のドームがレトロ風で懐かしさを漂わせている。ラッシュ時以外は手前の3番線しか使わない。電車の発車まで時間があるのなら、ぐるりとまわって4番線ホームに行ってみたい。
中ほどに「鶴見線80周年までの足跡」というパネル展示や在日朝鮮人の人たちが帰国したときに寄贈した時計のモニュメントがあるので見ておこう。

廃墟のようなホーム跡

鶴見線の鶴見駅発車時刻は、閑散時は20分毎だが、行き先がまちまちなので、区間によって運転間隔が変わってくる。浅野駅までは20分間隔なので、一番安心して利用できる区間だ。
発車すると、まずは、高架線を走るが、すぐに廃墟のようなホーム跡を通過する。本山(ほんざん)停留場跡で、本山とは近くにある曹洞宗大本山總持寺のこと。ここは、その最寄り駅だった。しかし、鶴見駅にあまりにも近いので、太平洋戦争中に廃止となっている。

電車は左にカーブし、東海道本線や京浜急行線を跨いで、最初の駅国道に到着する。固有名詞が駅名になっている珍しい例だ。鶴見線散策の最初の立ち寄りポイントなので途中下車してみよう。
国道駅は国道15号線(京浜国道)と交わる地点であることから命名された。階段しかないけれど高架下に降りてみると、タイムスリップしたような薄暗くてレトロな商店街がある。といっても、ほとんどのお店が閉まっていて侘しい。アーチ状の天井がモダンだった往時を偲ばせる。国道側の出入口の外壁に戦時中の機銃掃射の跡があって生々しい。

工場地帯のオアシス的存在「トンボみち」公園

再び鶴見線に乗る。鶴見川を渡ると、鶴見小野駅と弁天橋駅の間に車両基地がある。線路と反対側には工場地帯には珍しい緑地帯が見えてくる。弁天橋駅に隣接した企業のJFEが管理している「トンボみち」という公園で、工場地帯のオアシス的存在となっている。出入口は鶴見小野駅の方が近い。

海に面した​​​​​​​駅のホーム

弁天橋駅の次は浅野駅。鶴見線の本線と海芝浦支線がの分岐駅だ。分岐の真ん中にある扇形のホームはネコがたむろしていて癒される。海芝浦支線の列車本数は閑散時は1時間20分毎。終点の海芝浦駅は京浜運河に面していて、ホームでは釣りをしている人をよく見かける。改札口は東芝の工場に直結しているので関係者以外は出られない。
一般客は脇にある海芝公園を散策するしかない。ここからは遠くを走る首都高速道路の鶴見つばさ橋という斜張橋が見え、なかなかの絶景だ。とくに工場夜景は見ごたえがあり、隠れたデートスポットとして知られている。ただし、電車の本数が少ないので、あらかじめダイヤを調べてから行動したい。
浅野駅に戻って、本線を先へ進む。武蔵白石駅付近から分岐するのが大川支線。大川駅までの一駅しかない。しかも電車が走るのは朝と夕方だけ。土休日は、朝2往復と夕方1往復のみ。乗り鉄にとってはハードルの高い区間である。
本線の旅を続ける。浜川崎駅は、南武線浜川崎支線との乗換駅だが、一旦改札口を出て道路を渡って、さらに別の改札口を入る必要がある。同じJRなのに面倒なことだ。ここで折り返す電車が多く、その先、昭和駅と扇町駅へ向かう電車は2時間毎である。

ネコの楽園​​​​​​​

扇町駅は浅野駅以上にネコの楽園で、見ているだけで楽しい。ただし、電車は3分で折り返すので、ネコに見とれていると乗り遅れて2時間待つことになる。電車の本数が増える平日の夕方に訪問するか、あるいは路線バスは30分に1本程度あるので、電車は諦めてバスで川崎駅前へ向かうか、どちらかだ。
鶴見線といっても支線があって線路が入り組んでいる上に、工場地帯がほとんどとはいうものの見どころは多数ある。ただし、首都圏にしては異常に電車の本数が少ないので、あらかじめ列車ダイヤを調べた上で、動き回ることがコツであろう。

主なアクセス情報

JR鶴見駅まで、京浜東北線で東京駅から30分(400円)、横浜駅から11分(170円)
鶴見線、鶴見駅〜扇町駅 17分(170円)、鶴見駅〜海芝浦駅 11分(160円)

2. 京急大師線(京急川崎〜小島新田)

続いては、京浜急行電鉄(京急)の大師線。快特など長編成の電車が行き来する京急本線の京急川崎駅の高架ホームを下りると、4両編成の電車が待つ大師線のホームがある。昼下がりなら、それほどごったがえしてはおらず、どことなく長閑だ。昼間でも10分間隔なので、乗り遅れて途方に暮れる心配はない。

等身大の #美空ひばり パネル

最初の停車駅は港町駅。ホームには美空ひばりが歌った「港町十三番地」の楽譜が大きく掲げられている。跨線橋を渡って南口に行くと、天井付近には楽譜のオブジェがあるし、改札口付近には等身大の美空ひばりのパネルにレコードジャケットも展示してある。かつて、北口には日本コロムビアのレコード工場があり、この地は音楽ゆかりの駅なのだ。

柱が朱色​​​​​​​の駅

鈴木町駅の次は川崎大師駅。駅舎の川崎寄りには京急発祥の地という記念碑がある。京急で最初に開通したのは、大師線だからだ。柱が朱色という川崎大師の最寄り駅にふさわしい造りの駅舎を後に参道へ向かう。和菓子や赤いダルマを売る土産物店が並び、こうした情景を眺めているとずいぶん遠くへ来てしまったような気になる。大本堂まで10分ほどかかるけれど、散策にはほどよい距離であろう。

川崎大師の大本堂まで約10分

次の東門前駅を発車すると、2019年に完成したばかりの地下トンネルにもぐり、かつては産業道路駅と称した大師橋駅に着く。渋滞解消のため産業道路を横切る踏切を廃止するために地下化されたのだ。

トンネルを抜けると、再び地上に出て終点小島新田駅。駅前の歩道橋に上がると、広大な貨物ヤードを渡る。タイミングが良ければ貨物列車が発着するのを眺められるであろう。鉄道ファンなら30分や1時間いても退屈しないと思う。

貨物列車が行き交う

各種研究施設が集まるキングスカイフロントという新たにできたエリアまで散策するもよし、折り返して大師橋駅で降り、駅名ゆかりの大師橋を渡って東京都大田区側に進み、大師線とは別ルートを辿るのも面白い。京急空港線に乗って、蒲田方面へ戻るなり、羽田空港に立ち寄り、モノレールで都心に向かうのも一興であろう。

主なアクセス情報

品川駅〜京急川崎駅、快特で10分(240円)
横浜駅〜京急川崎駅、快特で7分(240円)
京急川崎駅〜小島新田駅、9分(160円)

3. 東急世田谷線(三軒茶屋〜下高井戸)

路面電車風の小型車両が2両編成で走る東急世田谷線。東急田園都市線の三軒茶屋駅で降り、地下道を進んで世田谷線の乗り場に着くと、その静かな雰囲気に癒されてしまう。レンガ造り風の瀟洒でヨーロッパのターミナル駅を彷彿とさせる駅構内も落ち着いて別世界のようだ。

ヨーロッパ風のターミナル駅

電車に乗る前に「世田谷線散策きっぷ」340円を購入しておこう。世田谷線は乗車区間に関係なく1回150円なので、3回乗るだけでおトクになる。

警報器も遮断機もない​​​​​​​、珍しい踏切

三軒茶屋駅を出ると2つめの若林駅到着前に環状七号線(環七)と平面交差する。自動車優先で、電車は一旦停止して信号が青に変わると進むという珍しい踏切だ。よく見ると警報器も遮断機もない。世田谷線が路面電車である証だ(法規上は鉄道ではなく軌道に分類される)。

幕末に活躍した #吉田松陰 を祀った松陰神社

次は松陰神社前。その名の通り、北に向かって数分歩くと幕末に活躍した吉田松陰を祀った松陰神社がある。松陰の墓のほか、松下村塾のレプリカもあり、学問の神様を偲んで訪れる人は多い。
世田谷駅と上町駅は「ボロ市」が開かれるときの最寄り駅だ。代官屋敷のある郷土資料館や世田谷城址公園といった歴史に縁のあるエリアでもある。また上町駅には小さな車庫があり世田谷線の電車が休んでいる。

緑色の古い車両が​​​​​​​ある

宮の坂駅前には緑色の古い車両が保存されている。かつて世田谷線で活躍し、その後、江ノ電で第二の人生を送ったものの里帰りした電車だ。昼間は車内見学もできる。また、踏切を渡ってすぐのところに豪徳寺がある。招き猫発祥の地であり、江戸幕府で大老を務めたものの「桜田門外の変」で暗殺された #井伊直弼 が葬られている。

招き猫発祥の地「豪徳寺​​​​​​​」

こうした歴史にゆかりのあるスポットのほか、沿線にはお洒落なカフェや雑貨店が点在していて、休憩する場所には事欠かない(コロナ禍のため休業している場合があるので、ホームページで確認しておこう)。

大人気の招き猫電車

また、10編成ある300系電車は、すべて塗装が異なる。幸せを呼ぶ黄色い車両のほか、豪徳寺に因んだ招き猫電車も人気で、東急のサイトには運転時刻が掲載されている。短い距離を行ったり来たりしているので、お目当ての車両は少し待てば折り返して戻って来る。乗ったり撮ったりするには好都合だ。

主なアクセス情報

渋谷から三軒茶屋まで、東急田園都市線で4分(160円)
新宿から下高井戸まで、京王線で11分(160円)
首都圏には、エアポケットのようなのどかな路線が他にもある。ここでは3路線を紹介しただけだが、東急池上線、東武亀戸線、西武多摩川線など名前だけ挙げておきたい。
(文:野田 隆(鉄道ガイド))

#ローカル #首都圏 #武蔵 #コロナ禍


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