
「みんなで頑張って 上り列車しか発車しない貴生川駅から 上り調子を目指そう‼」—。近江鉄道の終着駅・貴生川駅(滋賀県甲賀市水口町)構内の掲示板に運転士や駅員が手書きしているメッセージが話題を呼んでいる。「ほっこり案内文」と名付けられ、コロナ禍で沈みがちな利用客の心を和ませている。【村瀬優子】
「学生のみんなへ 学校も再開し、ようやくみんなの元気な笑顔が見れて とてもうれしいです」
掲示板の取り組みは昨年6月、新型コロナウイルス感染拡大で休校になっていた学校が再開した直後に始まった。最初のメッセージには同社のマスコットキャラクター「駅長がちゃこん」が両手を広げ、学生の姿が戻ってきたのを喜ぶ可愛らしいイラストが添えられている。
近江鉄道の活性化策を考えるイベントで、沿線住民から出された提案を元にスタート。月2回程度書き換え、これまで28パターンを制作した。昨秋に近江鉄道が1日500円で乗り放題になるキャンペーンを「メガネが割れるほどの衝撃」とユーモアを交えて紹介した際は特に反響があり、駅で切符を購入する人が増えたという。
取り組みの中心は運転士の古川貴幸さん(39)だ。縦120センチ、横90センチの掲示板に1時間ほどかけて絵や文章を丁寧につづっている。「季節感を大事に、心が和むようなイラストを添えたい。掲示板を見て、今日も頑張ろうと思ってほしい」と願う。駅員の柴弘さん(26)は「コロナ禍で乗客の会話は控えめで、雰囲気も暗くなりがち。少しでも前向きな気持ちになってもらえたら」と話す。
今年1月には箱根駅伝の話題と絡めて、「夢というゴール目指して 受験生がんばれ‼」とエールを送った。現在はバレンタインデーを前にそわそわする駅員が描かれ、クスッと笑える内容になっている。
乗客から「元気をもらっています」などと声を掛けられるようになった。「今後も続けてください」と激励する手紙も届き、駅員らの励みになっている。次回は15日ごろに書き換える予定で、卒業を控えた学生に「今まで近江鉄道を使ってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えるつもりだ。
(近江鉄道貴生川駅に「笑えてほっこり」と話題の案内文 運転士らがイラストも)