2020年の前回会場風景 写真:京王百貨店

コロナ禍の年末年始、読者諸兄には楽しみにしていた鉄道旅行や帰省をあきらめた方もいらっしゃるでしょう。そんな皆さんが、故郷や各地の味に浸っていただける催しが2021年1月7〜20日の2週間、東京の京王百貨店新宿店で開かれています。「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」は、今年で56回目になる新春恒例の催しです。

各地の業者が、おなじみの弁当や新作を会場で実演販売。期間中の売り上げはざっと6億円に上り、百貨店の食のイベントとして全国最大級です。利用促進につながることから、鉄道事業者も大注目。今回は会場を3フロアに分割し、インターネット予約販売を取り入れるなど感染拡大防止に万全の備えを敷きます。見どころならぬ〝味わいどころ〟を披露しましょう。

鉄道旅行の大衆化に合わせて成長

エコバッグやTシャツなど駅弁グッズ販売コーナーは今回が初登場 写真:京王百貨店

初回は1966年で、京王電鉄(当時は京王帝都電鉄)新宿駅直上の京王百貨店は開業3年目の新興でした。何かインパクトある催しを、と編み出したのが駅弁とうまいもの大会。発案者は別の百貨店から移籍した、敏腕の企画担当者だったと以前の取材で聞いたことがあります。

東海道新幹線は京王百貨店開店と同年の1964年開業で、鉄道による個人・グループの観光旅行がブームを呼んでいました。人の流れに呼応するように、各地に郷土色豊かな駅弁が誕生。コンビニや持ち帰り弁当店はまだ有史以前で、タビナカの食といえば駅弁がほぼすべてでした。鉄道ファン・駅弁ファンの皆さんには説明不要でしょうが、多くの駅弁は容器や包装紙にこだわり収集家もいます。それが駅弁とコンビニ弁当の最大の違いといえるでしょう。

ただ新幹線や特急列車での移動が当たり前になった現代は、「列車の窓を開けて立ち売りから弁当を買う光景」は完全に過去のものとなりました。駅弁業者にとっても、主な売り上げの場が鉄道駅から百貨店や大手スーパーの催事にシフト。駅は駅でも国道の「道の駅」が主力になっている業者もいるのは、時代の流れとはいえファンは複雑な思いを抱くのではないでしょうか。

「常磐線復旧記念特集」

「常磐線復旧記念特集」の駅弁。「常磐街道味めぐり」の包装紙には特急列車の写真があしらわれています 写真:京王百貨店

「元祖有名駅弁と全国うまいものフェア」は、単に駅弁や名産品を販売するだけではありません。半世紀以上、1回も休むことなく継続されてきたのは、百貨店の担当者の創意工夫があったから。長年蓄積してきた運営ノウハウが、フェアのいたるところに散りばめられています。

まずはコンセプトの明確化。今回のテーマは「がんばろう!駅弁」で、旅行や帰省を自粛した人たち、そして売り上げが減少する駅弁業者にエールを送ります。話題づくりもばっちりで、「常磐線復旧記念特集」と銘打ち、2020年3月に全線運転再開したJR常磐線沿線の茨城県や福島県の駅弁を集めました。なかでもいわき駅の「常磐線全開通記念鰹づくし弁当」は、名称通り昨春から販売を始めたばかりの新しい駅弁です。

福島県浜通りの拠点駅・いわき駅には駅弁がなく、2015年に参入した地元の商業施設が「列車で訪れるお客さまを、地元(茨城産)の食で歓迎したい」とオリジナル駅弁を考案しました。中身はカツオの竜田揚げ、カツオのおろし煮、カツオフレークとまさに〝カツオ尽くし〟です。

「特急列車ヘッドマーク駅弁」

鉄道ファン垂涎の「特急列車ヘッドマーク弁当」 写真:京王百貨店

鉄道ファンにお勧めなのが「特急列車ヘッドマーク弁当」で、写真をご覧いただけば説明は不要でしょう。2017年から始まった人気企画で、今回は新顔の第12弾「ゆうづる」と第13弾「あいづ」のほか、第4弾「ひたち」をリバイバル発売します。

企画はJR東日本グループのJR東日本リテールネット。ヘッドマーク容器はランチボックスとして継続使用できます。ほかに、「北斗星」「とき」「つばさ」もあります。

漫画「駅弁ひとり旅」とコラボ

「駅弁ひとり旅コラボ掛紙(包装紙)駅弁」あれこれ 写真:京王百貨店

昨年は「鬼滅の刃」が社会的ブームを呼び鉄道業界でもコラボ企画が誕生しましたが、駅弁がコラボするのはグルメ・鉄道紀行漫画「駅弁ひとり旅」です。

漫画キャラクター包装紙の駅弁がそろうのは今回が初めて。山陽線姫路駅「福盛いくらがけ穴子めし」、九州新幹線出水駅「鹿児島黒毛和牛 黒豚競演 牛すき焼きと黒豚炙り焼豚弁当」、紀勢線松阪駅「松阪でアッツアツ牛めしに出会う!!」などがオリジナルの包装紙で競演。チラシや店内装飾にもキャラクターをあしらいます。

「輸送駅弁」に企画担当者の知恵

まだまだ企画特集の話題は尽きないのですが、後は会場でのお楽しみということにして、ここで舞台裏の苦心を少々取り上げましょう。キーワードの一つが「輸送駅弁」で、その名の通り実演販売以外の駅弁は地方のメーカーから日々運ばれてきます。発注個数は前日の売り上げを基に設定されるそうで、売れ残らないよう注文するのが百貨店側の腕の見せどころ。天候の関係で到着が遅れることもまれにあるので、イベント終了まで担当者は気の抜けない毎日が続きます。

2020年まであった「駅弁対決」は、例えば北陸新幹線金沢駅と北海道新幹線新函館北斗駅の駅弁が味を競う人気企画でしたが、今年は開催見送り。例年発表されていた前年の売り上げランキングもありませんが、ここでは参考までに2019年ランキングを紹介しましょう。ベストファイブは、①いかめし(森駅) ②味くらべ牛肉どまん中(米沢駅) ③食べくらべ四大かにめし(稚内駅) ④氏家かきめし(厚岸駅) ⑤四味穴子重(姫路駅)。1、3、4位がJR北海道管内と、地域別ではダントツの強さです。

感染拡大防止に一工夫

コロナ禍にあっての人気企画ということで、京王百貨店は三密回避に知恵を絞ります。会場は恒例の7階大催場のほか、5階特設会場、中地階食品フロアに分割。5階会場を初めて開設し、大催場は出店数を前年のほぼ7割に減らし、休憩所を取り止めて通路幅を確保します。入場者をカウントし、場合によっては制限することもあります。

もう一つの感染対策がネット予約販売。京王ネットショッピング内「駅弁大会専用サイト」で初めて、約50種類の種の駅弁の事前予約・決済(支払い)を実施。百貨店での商品の受け渡しは、混雑を避けるため専用会場で時間分散して行います。会場に行かなくても「駅弁大会」気分を楽しんでもらえるよう、新たに「冷凍駅弁」をインターネット販売。そのほかうまいもの、駅弁グッズをネット販売します。

駅弁大将軍は「諏訪弁 ほいじゃねェ」

最後に、「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」を離れた駅弁のミニニュース。JR東日本は2020年12月14日、同年10〜11月に実施した東日本エリアの駅弁ナンバーワンを決める「駅弁味の陣2020」の投票結果を発表しました。総合評価が最高の〝駅弁大将軍〟は、長野県の「諏訪弁 ほいじゃねェ」、2位の〝駅弁副将軍〟は、栃木県の「きざみ岩下の新生姜 きぶなカレー ブラックシーフード」が選ばれました。

投票方式の味の陣は今回が9年目で、合計65点のエントリーに2万2319票の投票があったそうです。大会の隆盛や駅弁味の陣の人気を見ると、どうやら最近の駅弁は旅先の列車で食べるものでなく、自宅で味わうご当地グルメになっているようですね。

本文では触れられませんでしたが、2021年の干支・牛にちなんで牛肉駅弁の特集もあります 写真:京王百貨店

文:上里夏生

#駅弁 #百貨店 #全国 #コロナ禍


2021年の鉄道趣味は駅弁から 京王百貨店で「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」 半世紀以上にわたる歴史と今年の施策・注目駅弁を紹介

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