JR西日本が運転士の養成のため、大阪府吹田市の社員研修センターに最新型のシミュレーター装置を導入した。実車(225系)を活用し、本番さながらの乗務を再現する。新型コロナウイルス対応に追われ「かつてない危機」(長谷川一明社長)にある鉄道界だが、明日の安全・安心を背負う鉄道員の養成は淡々と続けられている。運転技術の難しさを知ろうと、シミュレーターを体験した。【高橋昌紀】

「乗客の命預かる厳しさ身につけて」

 ブーッ。「電車」を発車させた途端、「運転室」にけたたましい非常ブザーが鳴り響いた。「後方確認をしなかったからです」。ガタンと停車させた後、四熊大樹兼任教師(30)にテキパキと指導された。CG画像の「ホーム」を確認すると、転倒した乗客の姿が映っていた。

 社員研修センター内の在来線総合実習室。四熊さんの「ダメ出し」がさらに続いた。「即座に非常ブレーキをかけなかった。車掌に連絡しなかった。パンタグラフを下ろさなかった」。とどめに重い一言。「防ぐことができた人身事故です」

 このシミュレーター装置が導入されたのは2020年夏。運転台はもちろん、パンタグラフや台車なども実物を用いている。「摂津—玄海東」(計7駅、1車両基地)という仮想路線をコンピューターで構築。飛来物を発見▽踏切内で車が立ち往生——などのトラブルを想定し、計220種類の訓練用シナリオを体感できる。

 JR西鉄道本部によると、同社は国土交通省の指定を受け、国の「動力車操縦者運転免許」の講習・試験を実施している。研修センター内の養成所には20年12月現在、113期(電車)と39期(ディーゼル)の計68人が在籍。シミュレーターや座学などの講習3〜4カ月、各路線での技能講習4〜5カ月を経て試験に挑む。まれに不合格者も出る。

 駅員と車掌としての一定の勤務経験などがあれば入所でき、年齢に上限はない。大河原敬貴兼任教師(39)の担当クラス20人(男15人、女5人)は24〜37歳。「能力、経歴、家族などバラバラ。それぞれの個性に目を配り、力を引き出すことが大切」と声を強める。

 最近の生徒の気質には変化も感じられるという。旧国鉄時代に免許を取得したベテランの堀井博之専任教師(58)は「『キャリア形成の一つ』と割り切る生徒もいる。かつては憧れとして、運転士を目指したものですが」とやや寂しそう。それでも「生徒たちと鉄道談義にふけり、経験を伝えるのは楽しみ」とほほ笑む。

 この社員研修センターの敷地内にJR西は24年秋ごろ、乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故の事故車両の保存施設を建設する。養成所の講習にも活用する方針で、槌谷博和主任教師(53)は「運転士は乗客の命を預かっている。その厳しさを身につけてほしい」と静かに語った。同様の養成所は全国35事業者計37カ所。JR西では他の事業者からも、生徒を受け入れている。

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JR西日本、運転士養成に最新型シミュレーター 訓練用シナリオは220種類

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