DMV(デュアルモードビークル)は2021年に鉄道業界・旅行業界が期待する事業のひとつだ。阿佐海岸鉄道と沿線自治体が参加する「阿佐東線DMV導入協議会」は、2021年3月までとしていたDMVの開業予定を延期した。当初の予定では2020年度末の開業で、JRグループの2021年3月ダイヤ改正と合わせて話題になるはずだった。

阿佐海岸鉄道が導入するDMV車両

DMVの進捗については、阿佐海岸鉄道側で甲浦駅のモードチェンジ部、高架から地上へのスロープ整備などが進んでいる。7月18日からJR牟岐線の阿波海南~海部間でDMV導入関連工事が始まった。牟岐~海部間は運休し、バス代行運転となっている。阿波海南~海部間はバス代行運転のまま、11月1日に阿佐海岸鉄道に移管された。阿佐海岸鉄道は11月30日をもって鉄道車両による運行を終了し、バス代行運転を行っている。

開業延期の理由として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が挙げられる。高知県東洋町議会の議事録によると、3月10日の定例会では、「甲浦駅のスロープもできあがってきており順調に進んでいる」とある。しかし、6月25日の定例会では、「今年度におきましては、新型コロナの影響により、遅れが出始めている」と報告されていた。それでも2020年度内運行開始の目標は変わっていなかった。

8月19日に開催された「第6回 阿佐東線DMV導入協議会」でも、「新型コロナウイルスの影響により、企業では『在宅勤務』や『県を跨ぐ往来(出張)の自粛』から、協議がWeb会議に限定されるなど事業進捗のスピード感が落ちていたものの、7月から面着での協議が再開され、『年度内運行開始』に向け、スピードアップを図っているところ」と報告され、スケジュールに変更はなかった。

ただし、秋頃に予定されていた国土交通省からの「性能試験項目の提示」は延期された。「デュアル・モード・ビークル(DMV)に関する技術評価検討会」の開催は12月18日だった。阿佐海岸鉄道が提示した性能試験については了承され、さらに委員から、「GPSを使ったシステムは現地の状況に即してデータ取得を行うべき」「DMV車両の試験結果については(略)現地の気象条件を考慮したうえで判断すること」と意見が付いた。つまり、「現地試験を丁寧にやりなさい」ということだ。

DMVはJR北海道が開発した。阿佐海岸鉄道のDMVは、JR北海道が開発した3代目DMV「ダーウィン」とほぼ同じ仕様で、車両に関しては完成している。ただし、DMVを営業運行する線路と道路、とくに常設モードチェンジ部については未経験。DMV専用の保安システムも世界で初めて導入される。これらの設備と運用のデータはゼロからのスタートになる。関係者においても、これまで経験したことのない作業のため、想定以上に時間がかかった。

この意見を受けて、阿佐海岸鉄道はJR北海道が試験済みの項目も試験項目に加えた。また、JR四国から譲り受けた旧牟岐線区間についても、駅舎や設備の更新が必要とわかった。無人駅での利用者の安全性を確保するため、カメラの設置や踏切遮断機開閉確認装置などの安全対策も追加した。

阿佐東線DMV導入協議会は、試験に必要な設備を2021年1月中に完成させ、ただちに性能試験に入る。ただし、耐久性や点検整備期間を取る必要があるため、性能試験の完了は春頃とした。試験完了後は営業運行に向けた習熟運転を実施し、並行して試験結果を技術評価検討会に提出、安全性確認の評価を得た後に営業運転開始となる。

性能試験項目の提示から3~4カ月程度の遅れ進行となった上に、安全性確認は慎重を期すため、安易な短縮はできない。しかし、順調に進めば3カ月程度の遅れのまま、6月末には結果が出て、7月からの運行開始には間に合いそうだ。

次の開業目標時期は2021年7月以降に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックまで。DMVは線路と道路の両方を走行可能な車両で、世界で初めて営業運転が実用化される。世界が日本に注目する中の開業はむしろ好機かもしれない。

仮に3月に開業しても、新型コロナウイルス感染症による外出自粛、旅行自粛が続いていたら集客できず、寂しいスタートになってしまう。せっかく延期されたなら、観光ルートやお土産の開発の時間も増える。沿線の人々にとっては新たなビジネスチャンスの到来だろう。DMVのモードチェンジにひっかけて、舐めると色が変わる飴、あるいはお守りといった「人生のモードチェンジを応援するグッズ」などを提案したい。

DMVを単なる「名物の乗り物」ではなく、地域の象徴にする。徳島県海陽町、高知県東洋町がDMVをきっかけとして、進学、卒業、就職、退職、結婚、離婚など、あらゆる「人生のモードチェンジを応援する町」としてブランディングできる。その準備期間として、DMVの延期を前向きにとらえてほしい。

DMVに乗れば人生が変わる。そんな旅をする日が待ち遠しい。

#JR四国 #中小私鉄 #三セク #鉄道技術


阿佐海岸鉄道DMV、運行開始が延期に – 観光受け入れ体制も強化を

関連記事

東海道新幹線0系・N700SをNゲージサイズに、ファミマで発売 – 京商

185系の写真を約120点、JR東京駅構内で8日から「メモリアル185系おもいで館写真展」開催

列車内でハンバーガー頬張った女性を告発、韓国

熊本電気鉄道、『オフィスおかん』の活用で従業員の健康意識向上 人手不足のバス・鉄道業界における人材定着率向上を目指す

リニア・鉄道館10周年イベント、開館当時の写真展示やプレゼントも

JR東日本、駅の役割変革へ3駅をモデル駅に – 駅ナカカレッジ開校も