音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、鉄道好きで知られる古今亭駒治の新作『地下鉄戦国絵巻』についてお届けする。

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新作派の古今亭駒治は鉄道好きで知られ、鉄道ネタの新作をたくさん作っている。代表作は『鉄道戦国絵巻』。東横線がJRに寝返ったため東急が戦争を仕掛ける噺で、東急とJRは戦国大名、各路線は戦国武将に擬人化され、東急軍は田園都市線・大井町線・池上線・目黒線・多摩川線・世田谷線・こどもの国線の七人集に加えJRに恨みを持つ西武新宿線と京成線という陣容。遅れて京浜急行線も援軍に駆けつける。

この『鉄道戦国絵巻』の姉妹編が先日初演された。三田線が都営地下鉄を脱退して東京メトロに寝返ったため都営軍がメトロ軍に全面戦争を仕掛ける『地下鉄戦国絵巻』だ。

「おのれ三田線め、遂にやりよったか! わしの目を盗みメトロの南北線と手を組んで東急目黒線に乗り入れた時から怪しいと思っていた」

「日比谷・三田・白金台を失ったのは大きな痛手、残されたのは練馬・西馬込・本八幡くらいです」

「それでは到底太刀打ちできん。皆を集めよ! 全面戦争じゃ!」

都営軍は浅草線・新宿線・大江戸線・都電荒川線・日暮里舎人ライナー、そして都営に乗り入れている京浜急行線と京王線という陣容。早速軍議を開き、京急は東急を味方につけて目黒線への三田線乗り入れを阻止、新宿線は #猪瀬直樹 が壁を取り払った九段下駅で半蔵門線を襲い、千代田線以外すべてのメトロと接続している大江戸線は「何度乗り換えても都庁前に着いてしまう」迷宮に誘い込む等の作戦を立てる。

だが都営に乗り入れる数少ない路線の一つ京成線は、速く走ることだけが自慢の京急より高速運転している区間があることが発覚して京急と仲違いし、参陣せず。もともと都営線乗り入れが不本意だった京王線も早々に逃げ出した。首都圏のほとんどの路線がメトロに乗り入れているため都営軍は防戦一方に……。

期待どおりの爆笑編。地下鉄/私鉄トリビアに満ちた、駒治にしか作れない鉄道落語だ。

もっとも駒治の作品は、鉄道以外のネタも数多い。僕が『地下鉄戦国絵巻』を観た11月の独演会で駒治は他に『さよならヤンキー』と『最後の雪』の2席を演じたが、前者は東京から母の実家(茨城)を訪れた小学生の兄弟が「特攻服でリーゼントで剃り込みの“ヤンキー”という種族」が実在するかを探る冒険譚、後者は上野駅を根城にする伝説のスリ名人が引退して故郷の雪国に帰ろうと決意する人情噺。他に今年だけでも野球ネタ、学園ネタ、音楽ネタ等、色々と楽しませてもらった。

真打になって丸2年、駒治の勢いは目覚ましいものがある。

【プロフィール】

広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。2020年1月に最新刊『21世紀落語史』(光文社新書)を出版するなど著書多数。

※週刊ポスト2021年1月1・8日号

#新作 #落語 #地下鉄 #トリビア


古今亭駒治 トリビア満載の爆笑新作落語『地下鉄戦国絵巻』

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