コロナで業績が悪化した交通機関として航空会社に注目が集まるが、実は鉄道も大幅な赤字に陥っている。テレワークの浸透で出勤するサラリーマンが減り、定期券購入も落ち込み、観光地に向かう路線も外出自粛の影響で乗客が減る。JRに続いて終電を繰り上げるほか、増資や運賃値上げの検討を始めるところもあるなど、前例のない事態になっている。

かろうじて営業黒字確保したのは南海電鉄

日本民営鉄道協会がまとめた大手民鉄16社(関東9社、関西5社、名古屋鉄道、西日本鉄道)の2020年9月連結中間決算は、合計で売上高が2兆6759億円、営業損益が2540億円の赤字になった。減収率は2割減〜半減まで幅があり、落ち込みが少なかった南海電鉄だけが2.53億円の営業黒字を辛うじて確保した。

JR本州3社の連結決算も、東日本が売上高7872億円(前値同期比48.2%減)・2952億円の営業赤字(前年同期は2965億円の黒字)だったのをはじめ、西日本が同3899億円(同48.8%減)・1447億円の赤字(1288億円の黒字)、東海も同3378億円(同64.6%減)・1135億円の赤字(4068億円の黒字)と、軒並み散々な数字になった。

赤字決算の原因は今更説明するまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの拡大、出張や旅行の自粛など、社会の動きが停滞したためで、主力の鉄道事業が大きく落ち込んだ。4〜9月の運輸収入はJR東日本が前年同期比54.2%減、JR東海は73.6%減に達した。

JR東海の場合、新幹線への依存度が高い分、東海道新幹線のマイナスが全体の足を引っ張った形で、2021年3月期通期の見通しは営業赤字1850億円、最終赤字1920億円を見込む。東日本も通期で同5000億円、4180億円の赤字、西日本は同2900億円、2400億円の赤字になるとみている。いずれも、1987年の民営化以降で赤字は初めてだ。

ダメージ特に目立ったのは?

民鉄では、中間決算の売上高の前年同期比マイナスが大きかったのは西武ホールディングス(HD)47.4%減。ホテル・レジャー事業が302億円の営業赤字になり、コロナ前で売上高の約4割と他社よりホテル事業のウエートが重く、コロナによる外出自粛などの影響をもろに受けた形。中間最終赤字も390億円と、民鉄各社のなかで最も多くなった。

このほかの売上高は、近鉄グループHD54.0%減、阪急阪神HD41.3%減など。鉄道の利用客を見ると、京王電鉄39.5%減、東急電鉄38.4%減、東京メトロ38.2%減など全社が30%以上落ち込んだ。

通勤・通学などの定期券収入の比率が高い関東や関西の民鉄はJRに比べて落ち込み幅が小さかった。とはいえ、通期予想は全社とも最終赤字になるのは避けられそうもない。

終電繰り上げに運賃値上げ…

こうした空前の赤字決算に対し、各社は様々な対応策を打ち出している。

JR東日本は賞与減額や修繕費の一部先送りなど、今期の固定費を1000億円近く圧縮、終電も繰り上げる。中期的には通勤時間帯の本数削減や運転・点検の自動化などで業務の効率化を図る。JR西日本を含め、赤字路線の減便や人員削減なども焦点になる見込みだ。

民鉄では、東急が一般管理部門の経費を2割削減する目標を掲げた。西部HDは宿泊施設の再休業などで今期の固定費を620億円圧縮する。

小田急電鉄、西武HD、東急などは、来春にも終電を最大30分程度繰り上げる方針で、他社も検討を始めており、JR線との接続もにらみ、全国的な動きになる可能性もある。

値上げの動きも出てきた。近鉄GHDは傘下の近畿日本鉄道の運賃値上げの検討を表明した。もし値上げになれば、消費税引き上げの転嫁を除いて1995年以来ということになる。

西武HDは中間決算に合わせて、子会社の西武鉄道とプリンスホテルが優先株を発行し、総額800億円を調達すると発表、みずほ銀行、日本政策投資銀行に割り当てる。京急、東武鉄道も、それぞれ300億円、200億円の普通社債の発行を発表した。各社、コロナの長期化に備え手元資金を確保するとともに、売り上げ減で膨らんだ短期借入金の返済などにも充てる。

ただ、各社とも、感染拡大による緊急事態宣言の再発令など経済活動の回復にストップがかからないことを前提に計画を立てており、感染「第3波」の動向により、対応策の追加を迫られる可能性もある。

#終電 #増資 #値上げ #コロナ禍


終電繰り上げ、増資に運賃値上げ… コロナ禍直撃の鉄道各社、その対応策は

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