需要動向に応じて料金が変わる仕組みは多くのサービスに広がってきたが、鉄道のような生活インフラへの導入は、慎重に進めねばならない。

国土交通省は、鉄道運賃に時間帯などで料金が変動する制度を取り入れる検討に入った。今後5年間の交通政策の指針を示す基本計画案に盛り込んだ。

ラッシュ時の運賃を上げ、それ以外は値下げすることを想定している。JR東日本と西日本が昨年、実施の意向を表明していた。

混雑の緩和が主な目的とされるが、ピーク時に合わせて配置している車両や人員が少なくて済むため、コストが浮くという。

新型コロナウイルス流行を受けた旅客需要の激減により、鉄道会社は軒並み赤字に陥っている。在宅勤務の定着で需要はコロナ前には戻らないとみて、運行の効率化を図る狙いがあるのだろう。

変動料金は、宿泊費や航空運賃といった分野では一般的で、コンサートやスポーツ観戦でも始まっている。人が集中する土日などの料金を高くし、平日を割安にしているケースが多い。

一方、鉄道は国民に欠かせない重要な生活の足だ。運賃の上限引き上げには国の認可が必要で、JR東日本、東海、西日本の主要3社は、1987年の分割民営化以降、消費税率引き上げ時を除けば一度も上げていないという。

値上げを含む新たな料金制度に移行するのであれば、丁寧な説明と制度設計を行い、利用者の理解を得ることが前提だ。

ラッシュ時の運賃が上がる場合は、出社時間を動かせない人にしわ寄せが生じることになる。通勤定期の扱いはどうなるのか。

非正規社員などは会社から通勤手当の支給を受けていないケースがあり、打撃が大きくなろう。

政府やJRは、どのような人にどんな影響が及ぶのか、様々なケースを検証し、不利益を受ける人に配慮することが不可欠だ。

企業が時差通勤の対象を広げるなど、働き方の見直しについて社会全体で考える必要がある。

現在の運賃は、人件費や設備の維持更新費などのコストに利益を上乗せして決める「総括原価方式」で、電力やガスと同じだ。変動料金は想定しておらず、抜本的な制度改革を伴う可能性がある。

価格体系が複雑になり、乗る際の負担がわかりにくくなるのではないかとの懸念も残る。

政府は、利用者の利便性と運行の安全性確保を最優先にし、論議を深めてもらいたい。

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鉄道の変動運賃 丁寧な制度設計が大前提だ

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