鉄道ファンにはさまざまなジャンルがあるのをご存じだろうか。

私のように鉄道旅行など乗ること自体を楽しむ「乗り鉄」、鉄道の走行音や駅メロを愛でる「音鉄」、駅弁が好きな「駅弁鉄」など、ジャンルは多岐に渡る。

そんな中、ここ最近、お茶の間をざわつかせているのが「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンたちだ。鉄道の写真を撮るのが趣味の人たちで、スマホでカジュアルに撮影する人から、プロ顔負けの機材を駆使して撮影をする人もいる。レアな列車が運行される日は、「またとない機会だ!」と鬼気迫る勢いでファインダーを覗くさまを見かける。

いいアングルのためなら、たとえ火の中、水の中。ローカル線に乗っていると、足場の悪い山中で三脚を立て、撮影にいそしむ撮り鉄を車窓に見つけ「こんなところまで!」と驚いてしまう。

愛の深さゆえか、ときに度を越えたマナー違反をやらかす輩もいる。線路や私有地への立ち入りや、なかには邪魔な樹木の枝を折ったり、花畑を荒したり、鉄道車両に細工を施すなどの迷惑行為をする過激派だ。このような人たちは、我々鉄道ファンの中でも、近づきがたい存在であったりする。

もちろん世間からは「いい写真が撮れれば何をしてもいいのか」と批判の声も上がっている。なにより、安全に運行することが義務である鉄道会社は、彼らの対応に頭を抱えている。そして、しばしばSNSでは、撮り鉄vs鉄道会社の仁義なき戦いの様子を垣間見ることができる。

撮り鉄がキレた「でんしゃがだいすきなおともだちへ」

2021年3月、Twitter上である画像が話題となった。

大阪府高槻市内の踏切に掲出された、ある貼り紙である。線路の中に入らない、電車の邪魔をしてはいけない、私有地に入ってはいけないという内容であるが、通常のそれとは少し様子が違っていた。

すべて、ひらがなで書かれていたのである。

(※写真はイメージ)©️iStock.com

「でんしゃがだいすきなおともだちへ」——このような言葉から始まっていた。一見、子どもたちに向けられたメッセージに見えるが、これに撮り鉄が噛みついた。

「明らかに大人の撮り鉄に向けた内容」「俺たちを侮辱しているのか!」と、すべてひらがなで書かれたことを挑発と受け取り、怒り心頭である。この話題はSNSで一気に拡散され、その日のトレンド上位にまで上り詰めた。

後日、JR西日本は「鉄道ファンをけなすものでない」と説明している(すでに貼り紙は撤去)。しかし、撮り鉄たちの怒りの炎は鎮火せず、「じぇいあーるにしにほんではたらいている人たちへ」と、煽るようにツイートした人もいた。JRへの反撃ということなのだろう。

この争いは、多くの鉄道ファンがあきれ返る結果となった。撮り鉄vs鉄道会社の根深い戦争を感じずにはいられないエピソードだった。

八高線の車掌は撮り鉄に向け中指を立て…

過去を振り返ってみれば、迷惑な撮り鉄にしびれを切らし、ありえない行為に及んだ鉄道マンもいる。2021年1月、JRの車掌が乗務中、駅ホームで撮影をしていた撮り鉄に向かって、中指を立てたのだ。

その様子は、SNSで瞬く間に拡散。画像を見ると、たしかに八高線の乗務員室から中指を立てている。なんということか。中指を立てる行為は、世界的に見ても許されない侮辱のポーズだ。一般的な鉄道ファンはみな「ヒエッ」と悲鳴をあげた。

これについてJR東日本は事実関係を認め、謝罪。どうやら該当車掌は、自分が写真に写り込むと思い、カッとなって行為に及んだようだ。ここまで彼の激情を駆り立てるほど、日々のストレスが積み重なっていたのだろうか…。

中指を立てる行為そのものは許されないが、この事件では「気持ちは理解できる」「自分が写り込んでいたら嫌だ」など、擁護する声もたくさん見られた。「自分も撮り鉄なので、注意して撮りたい」とツイートする鉄道ファンもいた。

以来、八高線というワードを検索すると、候補ワードとして「中指」が出るようになったのは悲しい。ただ、この件を受けてなのか、最近は撮り鉄のカメラに対し、手を振ったり、ピースサインを送るフレンドリーな鉄道マンもいるようだから、おもしろい。

撮り鉄同士が叫び合う迷惑イベント「罵声大会」とは?

駅など人気の撮影ポイントでは、撮り鉄同士の小競り合いが起きることもある。いい写真を収めたいがための場所取り合戦はその最たるものだ。その様子から、誰が名づけたか「罵声大会」と呼ばれるようになり、YouTubeやTwitterなどではその様子がアップされている。

大会という名がついているが、もちろん1等賞を決めて賞品が授与されるイベント、というわけではない。残念ながら、撮り鉄に起因する迷惑行為の1つである。罵声大会は、撮り鉄たちが競うように罵声を浴びせている現場を揶揄した言葉なのだ。

罵声大会の動画を見れば、駅ホームで、カメラを持った男たちの怒号が飛び交っている。罵声の内容をよく聞いていると「下がれ!」「下げろ!」と言っている。彼らは一体何に怒っているのか。

珍しい列車が駅に入ってくる場合、プラットホームには人だかりができ、横に列ができることがある。その際、すべての人がきれいに写真を撮れるように気を回すのがマナーだ。しかし、ときどき前列の人の頭や機材が、後列の人の写真に入ってしまうときがある。これに対して「下がれ!」「下げろ!」ときつい声をかけているのだ。状況が変わらないと「ふざけてるのか」「日本語わかるのか!?」などとエスカレート。一触即発の雰囲気だ。

もちろん罵声大会が開催されている時間は、駅も通常営業中である。一般客も利用している。罵声大会に出くわしてしまった人は、非常に怖い思いをするだろう。なかには、駅員や一般の人に向けて罵声を浴びせるケースもあるから悲しい。

同じ鉄道ファンとして、列車に興奮する気持ちはわかる。しかし、愛ゆえに罵声を浴びせる光景はまことに残念である。

是か非か。「撮り殺隊」も登場…

こうした撮り鉄のトラブルが話題になり、かなしいかな、世間では「撮り鉄は迷惑なやつら」という認識が広まってきている。中には「迷惑な撮り鉄を成敗しよう!」という正義感を燃やす人も出てきている。

具体的には、撮り鉄がターゲットにする車両に乗車し、窓から手を出したり、窓に張り紙をするなどの行為だ。もちろん、これが写り込んだ写真は美しいものと言えない。さぞかし撮り鉄は悔しい思いをするのだろう。

撮り鉄を退治しようとする勢力。『鬼滅の刃』の鬼を退治する鬼殺隊になぞらえて、「撮り殺隊」とでも名づけようか。しかしながら、電車の窓から手を出すのは危険な行為に他ならない。窓に張り紙をするのも、許される行為ではないはずだ。かように撮り鉄と周囲の人のデッドヒートは、さらに泥沼化しているのだ。

素行の悪い撮り鉄は一部のファン

ときに凶暴な撮り鉄たち。我々鉄道ファンにとっても、過激な撮り鉄は少しこわい存在だ。「駅で撮り鉄を見かけたら、あまり近づかないほうがいい」とアドバイスする人さえいる。過激な撮り鉄たちのニュースは、我々鉄道ファンにとっても耳が痛い。素行の悪さがニュースで取り上げられる度、鉄道ファン全体の評判が落とされているようで、心を痛めている。

しかしながら、世間の人に伝えたいのは、迷惑行為をする人たちは、撮り鉄の中でもごく一部の人であるということだ。撮り鉄のほとんどは、ルールを守り、グッドマナーで写真撮影を楽しんでいる。周囲の人や環境にも配慮している。罵声を浴びせたりしない。嫌なニュースを聞くたびに、「一緒にしないでほしい」と心を痛めているはずだ。

鉄道ファンは、鉄道を愛する、善良な市民だ。鉄道の話を聞かれれば、喜んで、時間を忘れて語り始める。どんな些細な質問にもやさしく答えてあげている。

私は声を大にして言いたい。

過激な撮り鉄のことは嫌いになっても、鉄道ファンのことは嫌いにならないでください!

(東 香名子)

#撮り鉄 #仁義なき戦い #駅弁 #旅行


「撮り鉄vs鉄道会社 仁義なき戦い」を見て思う鉄道ファンの“心の叫び”

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