近鉄の特急車両12200系の引退、廃車が確定したようだ。2020年12月30日の毎日新聞の記事「英女王も乗車した豪華特急の先駆け 近鉄12200系が3月で引退」にて、「新スナックカー」の愛称を持つ12200系が老朽化のため、2021年3月に引退し、その後は基本的に廃車となる見込みと報じられた。

近鉄の特急車両12200系。愛称は「新スナックカー」

12200系は168両が製造されたうち、現在24両が残っている。運用面では、名阪特急で22000系「ACE」、22600系「Ace」などに連結されることが多い。12200系に喫煙室がないため、喫煙室付きの形式と連結するように配慮されているからだという。

12200系は分煙時代前の車両で、各座席に灰皿が設置されていた。近年も禁煙列車が増える中で、たばこが吸える特急列車として紹介され、愛煙家の選択肢のひとつとなっていた。鉄道ファンにとっては、喫煙可のマークが12200系を示す記号にもなっていた。

しかし、近鉄は改正健康増進法施行を受けて、2020年2月から特急列車の全席禁煙化を実施した。その報道資料に、「なお12200系車両は、2020年度末までに順次特急列車の運用から外れる予定です」とあった。

毎日新聞の記事では、「国内豪華列車の先駆けとなった近畿日本鉄道の特急12200系(愛称・新スナックカー)」と書き出している。近鉄には、「しまかぜ」「ひのとり」といった豪華な列車をはじめ、「アーバンライナー」「伊勢志摩ライナー」「さくらライナー」のような特徴ある列車も走っている。それに比べると、12200系は「普通の特急」というイメージがあり、近鉄のプレスリリースでも「汎用特急」に分類されている。

近鉄大阪線を走る12200系の特急列車

12200系を「豪華列車の先駆け」と呼ぶ理由は、少し説明が必要かもしれない。

1964(昭和39)年に東海道新幹線が開業するまで、名古屋~大阪間は近鉄特急が国鉄をややリードする展開だった。近鉄の上本町駅が大阪の中心部に近く、運賃も安く、所要時間はほぼ同じだった。しかし、東海道新幹線の開業が近鉄に大きな影響を与えた。

近鉄は名阪特急の客を新幹線に奪われた。その対応策として、まず12000系が作られた。2両編成単位で、大阪寄りに軽食を販売する「スナックコーナー」、名古屋寄りにトイレを設置した。ここから12000系は「スナックカー」と呼ばれた。座席は回転リクライニングシートで、初代新幹線電車0系よりも快適な座席だった。

ただし、当時の「スナックカー」は名阪ノンストップ特急で新幹線に太刀打ちできなかった。2両編成でも空席が多かったという。一方、停車タイプの名阪特急は好調で、2編成を2本連結し、4両編成で運転する列車もあった。東海道新幹線で東京駅から名古屋駅へ、そして近鉄沿線へ観光客を増やすというプラスの効果もあった。そこで近鉄は、新幹線から乗客を引き継ぎ、近鉄の沿線中核都市と観光地を結ぶ役割を重視していく。

1970(昭和45)年の大阪万博をきっかけとして、伊勢・志摩へ特急列車を大増発する機運が生まれた。難波線と鳥羽線の建設、大阪線の複線化、志摩線の改軌を実施し、12000系の改良型となる特急車両を増備した。これが12200系だ。初期に製造された車両はスナックコーナーを拡大したほか、電子レンジも設置して温かい食べ物を提供した。ここから12200系は「新スナックカー」の愛称で呼ばれるようになった。

トイレは和式と洋式を1つずつ設置した。近鉄特急としては初の洋式トイレで、大阪万博に訪れる外国人観光客を意識した。いまで言うところの「インバウンド対応」だろう。リクライニングシートは座面もスライドするタイプとし、乗客におしぼりを提供した。これらの画期的な設備とサービスが、毎日新聞の記事にある「豪華列車の先駆け」というわけだ。

■スピードからサービスの競争へ転換した汎用特急

12200系は量産され、近鉄特急の大増発に貢献した。12000系譲りの基本設計は、後に誕生した汎用特急車両のデザインにも影響を与えている。後にスナックコーナーは廃止され、座席を増やした。その配置は、12200系の4両編成版ともいえる12400系をはじめ、22000系「ACE」、22600系「Ace」といった車両にも継承されている。

新幹線のスピードには敵わない。ならばサービスで勝負。晩年は汎用特急に分類されてしまったが、12200系のスピード以外の快適さを提供するコンセプトは、後の「アーバンライナー」「ひのとり」にも受け継がれた。

12200系は伊勢神宮に参拝する皇族も利用したほか、1975年に来日したエリザベス女王の「お召し列車」としても使用された。その際、大きな座席をゆったりと配置し、窓は防弾ガラスにしたという。この晴れ舞台の経験は、近年の「しまかぜ」によるお召し列車に生かされているといえそうだ。

毎日新聞の記事では、近鉄の鉄道本部の担当者による「密を避けた『さよなら運転』で看板列車を穏やかに見送りたい」とのコメントが添えられている。短いコメントだが、近鉄ファンにとって「さよなら運転」というイベントがあることがうれしい。また、「看板列車」という言葉に、12200系への敬意が見受けられる。

観光列車の企画担当者も、「ラストラン、撮影会などの晴れ舞台を用意したい」と述べている。さらに、「団体列車への転用を検討」との声も紹介された。ただし、12200系ベースの団体列車はすでにあり、塗装を変更した上で15200系「あおぞら II」となっている。その他、クラブツーリズム専用列車15400系「かぎろひ」への改造も行われた。12200系を団体用に改造しても、12200系のまま存続する可能性は低いと思われる。

クラブツーリズム専用列車15400系「かぎろひ」
15200系「あおぞら II」

近鉄は2015(平成27)年11月12日に発表した報道資料「近鉄特急のイメージが大きく変わります! ~特急サービスのあり方を全面的に見直しています~」の中で、汎用特急車両の塗装をニューアルする方針を示した。しかし、対象車両のリストに12200系は入っていなかった。この時点で12200系の終焉は見えていたように思われる。長らく近鉄特急のトレードマークだった紺色とオレンジ色の塗装も、ついに見納めになりそうだ。

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近鉄12200系「新スナックカー」引退へ – インバウンド対応の先駆者

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